国内

重税と物価高騰、働けど楽にならない中年サラリーマンの恐怖と不安

2022年春闘の労使交渉の回答が金属労協の職員によってボードに書き込まれる。2022年3月16日(時事通信フォト)

2022年春闘の労使交渉の回答が金属労協の職員によってボードに書き込まれる。2022年3月16日(時事通信フォト)

 連合が発表した2022年春闘の最終集計結果によると、ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた平均賃上げ率が2.07%で3年ぶりに2%を上回った。新型コロナウイルス禍前の水準となり一息つけそうな雰囲気に見えるが、増税と物価高騰で相殺されかねない現実がある。実際に給与所得者たちはどんな実感を抱いているのか。俳人で著作家の日野百草氏が、ますます不穏になる時代、働き盛りの40代サラリーマンたちから昇給についての実感を聞いた。

 * * *
「昇給したはずなのに手取りがほとんど増えません。使える金が減っている」

 関東の中堅物流会社で事務職をする40代独身男性サラリーマンからの相談。週末金曜日、社会問題に興味のある勤め人の集まる会での話だったが、安倍晋三元内閣総理大臣の銃撃事件のニュースがスマホに流れる中での話となった。容疑者は41歳、ここにいる方々よりは年下だが、「40代と聞くとドキリとするね」と声をひそめる。みな団塊ジュニア、ポスト団塊ジュニア世代である。

「もう一生こうなんですかね」

彼は昇給しても手取りが増えない、使える金が減っていると語る。仮に彼をAさんとする。結婚願望はあるが半ば諦めているとも。

「10年以上前から手取りが増えません。額面では少ないながらも上がってるはずなんですけどね。ボーナスは夏冬で各2ヶ月、というところです」

 会社や業種、年齢によって引かれる額は変わるが、Aさんの年収は約450万円。OECD(経済協力開発機構)の「世界の平均賃金」でいえば日本人の平均とされる年収445万3,314円とほぼ同じということになる。

「平均といってもこの年で手取り月20万円ちょっとですよ、40歳も過ぎてこんな収入のおじさんになるなんて思いませんでした」

 確かに男性平均である482万6,514円よりは少し低い。もちろんこの平均賃金は男女、正規非正規すべてひっくるめた数字なので正社員男性、などの属性でくくると実際はさらに上がるが、安定した正社員の男性事務職という面からすれば、もっと低い賃金で働く方々、とくに地方からすればAさんは独身ということも含め恵まれていると思われる額かもしれない。

「でも上の世代はもっと貰っていたはずですし、社会保険とか年金とかも低くて引かれる額が少ない分、手取りも実際に使えるお金もずっと多かったはずです」

 これは団塊世代から上を知る世代にとっての実感だろう。それなりの会社のサラリーマンになれば年収はもちろん手取りも年齢とともに上がるはずだった。妻と複数の子どもを養う当たり前の家庭、それは大企業のエリートや成功した自営業でなくとも可能だった。可処分所得、とくに実質可処分所得(後述)も現代より大きかった。

関連キーワード

関連記事

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト