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「安倍先生が力強く握手してくれた温もりを忘れない」。被害者に寄り添って通してくれた法案

戦後最年少で初めて内閣総理大臣に就任して約3か月後の2007年1月、昭恵夫人とイギリスを訪問した安倍氏。当時のブレア英首相夫妻とロンドンの公邸前で。(c)PA Images/時事通信フォト

戦後最年少で初めて内閣総理大臣に就任して約3か月後の2007年1月、昭恵夫人とイギリスを訪問した安倍氏。当時のブレア英首相夫妻とロンドンの公邸前で。(c)PA Images/時事通信フォト

「安倍先生はとてもあたたかい心を持った方でした」

 そう振り返るのは、犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務局長の高橋正人さん。安倍晋三元首相があの時決断してくれなかったら、今のような刑事裁判は実現していなかった、と当時の状況を明かした。

「実は被害者参加制度は、安倍先生がいなければ成立していなかったかもしれません。安倍先生は、被害者参加制度の法律を国会で通してくれた時の首相でした」(以下カッコ内、高橋さん)

 2006年から始まった第1次安倍内閣は、閣僚による不適切発言や年金記録問題など問題が噴出し続け、支持率が急落。2007年8月の参院選挙では、民主党が大勝して参議院過半数を取ることが確実視されていた。

 しかし、民主党政権になったら、被害者参加制度の法案は通らないことも予想された。

 安倍政権中の2007年6月20日までの通常国会の会期中に、何としても通してもらわなくてはと危機感を持ったのが、被害者参加制度の法案化に向けて活動していた『全国犯罪被害者の会(あすの会)』(2018年解散)だ。高橋さんは当時、同会の副代表幹事でもあった。

「国会で審議する時、普通であれば10日は必要。6月上旬の段階で全く日程が決まっておらず、これで会期中に通るのだろうか、とヒヤヒヤでした。そこで、『こうなったら、首相に直談判するしかない』と、あすの会で首相官邸に出向いたのです」

 まず会ってもらえるかさえわからなかった。しかし、そんな多忙な時にもかかわらず、6月12日に面会許可が出たのだ。

「それで、もしかしたらこれは、と希望がもてました。面会が叶い、『被害者参加制度の法案を今国会のうちに、どうか通してください』と訴えた私たちに、安倍先生は『この法案だけは必ず通します』と力強く答えてくださいました」

 帰り際には安倍氏から、面会に訪れた全員一人一人と握手をしてくれた。

「その時の手のぬくもりが、今でも残っています。後から安倍先生に近い方に聞いたところでは、この法案については、最初から通そうとしてくださっていたそうです。被害者のことを考えてくださるあたたかい方でした」

 そして、まさに会期中ギリギリの6月20日に参議院本会議で可決し法案成立した。

2007年6月7日。ドイツで行われたG8サミットで。笑顔の安倍元首相。プーチン露大統領、当時のプローディ伊首相。この5日後、安倍元首相は帰国後すぐに面会の時間を作ってくれた。(c)SPUTNIK/時事通信フォト

2007年6月7日。ドイツで行われたG8サミットで。笑顔の安倍元首相。プーチン露大統領、当時のプローディ伊首相。この5日後、安倍元首相は帰国後すぐに面会の時間を作ってくれた。(c)SPUTNIK/時事通信フォト

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