《6種類以上の薬で副作用の頻度が上がる》《5種類以上を服用する高齢者の4割以上にふらつきや転倒が起きている》
これらの文言は、厚生労働省がとりまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針」を一部抜粋したもの。こうした“薬ののみすぎ”がもたらす弊害は、以前から繰り返し指摘されており、退院時に2種類以上の薬を減らすことができれば診療報酬が加算されるなど、国を挙げて減薬への取り組みが進んでいる。
必要以上の服用が毒になるのは市販薬にも当てはまる。全国の医師と連携して減薬に取り組む名古屋経済大学准教授で管理栄養士の早川麻理子さんが説明する。
「市販薬の添付文書に書かれた『用量』こそがその薬が最も効果を発揮する最適な分量です。それ以上の服用は体に負担をかけるうえ、耐性ができて効きづらくなります。薬は合併症予防のために症状を抑え、その隙に食生活を改善して病気や不調を治す“つなぎ”として使用すべきです」
10年来のひどい便秘に悩み、一時は用量の5倍以上の便秘薬を服用していた女優の和泉ちぬ(65才)も、「薬で便秘は治らなかった」と断言する。
「最初は“出ない”と感じたときに1錠のむ程度だったのですが、それで便通があるとすっきりするので、気がつくと毎日のむことが習慣になっていました。特に当時は仕事が忙しくて生活が不規則だったため、薬に頼らざるを得なかった。だけど次第に同じ量をのんでも出にくくなり、2錠、3錠と増えていきました」(和泉・以下同)
だが1日5錠にまで増えたとき、ふとわれに返った。
「“このまま薬の量が増え続けたら、一体どうなるんだろう”と不安になったことがきっかけです。その頃には、のまないと落ち着かなくなっていたし、自分でも依存状態に陥っていることがはっきりとわかっていました。
一念発起してからは服用を一切やめ、漢方の病院に通いながら、腸活に取り組みました。仕事柄、ロケに行くときは水を控えていたのですが、そのせいで便が硬くなっていたことがわかって、水をたくさん飲むようにしたり、食物繊維の多い玄米を食べたり、マッサージをしたりして体質改善に努めました」
努力のかいあって、いまは薬なしでほぼ便秘が解消。快適な生活を送っているという。和泉は「薬を手放したことで得たものは大きい」と微笑む。
「自分の努力によって体質を改善することができたことは大きな自信になりました。また、薬を使わなくなると、体の変化に敏感になります。お通じが悪くなると“水分が足りないから水を飲もう”とか、“繊維質が足りていないから野菜を食べよう”と体の声に耳を傾けて適切な処置ができるようになる。
薬に頼っているときは、のみさえすればとりあえずその場ではすっきりするため、自分の体がどんな状態であるかは、まったく考えたことがなかった。いずれ、年を重ねれば西洋医学に頼らなければならないことが増えるでしょう。本当に必要なときに薬が効くように、それまではなるべく自分の体が持つ自然治癒力を生かして生活したいと考えています」