参院選が自民党の大勝に終わったことで、政局に関する永田町の関心は内閣改造・党人事に移っている。松野博一・官房長官や林芳正・外相の続投、一部では菅義偉・前首相の副総理就任説も取り沙汰されているが、焦点となっているのが殺害された安倍晋三・元首相の実弟、岸信夫・防衛相の処遇である。ベテラン政治ジャーナリストは言う。
「岸さんはかねて足下がおぼつかない、ろれつが回らないなど健康不安説が囁かれ、内閣改造では交代となる可能性が高いと言われてきました。しかし、岸さんの閣僚入りを望んでいたのは安倍さんです。安倍さんは、次の衆院選で岸さんが秘書官を務めている息子の信千世さんに跡を譲ることを想定して、それまでは弟に大臣を続けさせたいと、菅政権から岸田政権に変わっても続投を希望していたと言われています。
それだけに、本人が自ら退かない限り、今この状況で辞めさせるのは難しい。ここで岸さんを外すと、『安倍さんの思いを踏みにじるのか』という不満の声が党内から上がる可能性が高いでしょう。とはいえ、健康不安が取り沙汰される今の状態で、国際的に緊張感の高まっている防衛大臣の職を続けられるとも思えない。岸田首相も頭を悩ませているはずです」
そんななか、自民党内では処遇をめぐる新たなプランが持ち上がっている。自民党関係者は言う。
「岸さんを防衛大臣から党の要職にスライドさせる人事案です。もともと次の内閣改造では、岸田さんが買っている福田達夫・総務会長を重要閣僚に抜擢する案が持ち上がっていた。そこで、空いた総務会長に岸さんをスライドさせるのはどうか、という意見があるのです。総務会長は党三役の重要ポジションながら、裏方的な役割が多く防衛大臣のように表に立って会見する機会は少ない。周囲がサポートすれば務まるのではないかと言われています」
岸氏は7月12日、自身のツイッターに「兄を失いました。同時に日本にとりかけがえのないリーダーを失いました。テロによる民主主義への冒涜、暴力による言論封殺が行われてしまいました。兄は日本を愛し、この国を守る為、政治に命を賭けてきました。遺された者達は皆分かっています。お疲れ様でした。ありがとう。今はただ安らかに。」という追悼文を兄弟ツーショットとともに投稿。無念の思いとともに、兄の遺志を継ぐ覚悟を感じさせた。