7月から始まった2022年夏クールの連続ドラマには、「働く女性」をテーマにした作品が多くラインアップされている。さまざまな職業の女性が活躍する今期の夏ドラマ。なぜ働く女性の物語が増えているのか、ドラマに詳しいフリーライターの西森路代さんは以下のように考察する。
「男女格差を是正する意識があるというか、そういう空気を汲み取っているのだと思います。逆にいまの時代、女性が男性のサポート的な立場で、うまく物語を展開させる方が難しいのではないでしょうか」
しかし、このような作品が増えることへの懸念もある。
「男女の役割を解体した作品は、理想の社会のあり方を示せるという面もありますが、現実にまだ残っている男女格差や、そこで感じる“生きづらさ”をリアルに表現するのが難しくなるかもしれないとも思います。今回取り上げた作品に出てくる女性たちは、努力していまの地位に就いた素晴らしい人々なのだと思いますが、理想だけではない、現実にも目を向けてもらいたい。
そういう意味で、主人公が東大を出ているのにパラリーガルである『石子と羽男』と、出てくる家庭に問題がありそうな『家庭教師のトラコ』なんかは、理想だけではない面を見せてくれそうな気がします」
それぞれの作品の見どころを西森さんに聞きました。
●『競争の番人』(毎週月曜よる9時〜・フジテレビ系)
坂口健太郎と杏がW主演を務めるバディもの。誰もが一度は耳にしたことがあるが、その実態はあまり知られていない行政機関・公正取引委員会を舞台に、2人がタッグを組んで数々の不正を暴いていく。
第1話は、もともと刑事として働いていた白熊楓(杏)が、公正取引委員会への異動を命じられるところから始まる。そこで出会った小勝負勉(坂口健太郎)は、白熊の教育係にもかかわらず、仕事を一切教える気がない。そんな中、2人は複数のホテルで行われているウエディング費用のカルテル問題を調査することになる。
【見どころ】
「今期に限らず男女バディっぽいドラマは多いですが、この作品は小説原作で、舞台が公正取引委員会というところが、ほかにないものかと思います。W主演の2人はもちろん、小池栄子さん、大倉孝二さん、小日向文世さん、寺島しのぶさんという共演者の顔ぶれも重厚な感じ。こうした俳優さんたちを生かした演出になっていたら、より楽しみに見られるのではないかと思います」(西森さん)
●『ユニコーンに乗って』(毎週火曜よる10時〜・TBS系)
永野芽郁が演じる成川佐奈は、3年前に教育系アプリを手がけるスタートアップ企業「ドリームポニー」を立ち上げた若きCEO。そんな成川の元に、ある日、会社の雰囲気とは全く異なるおじさんサラリーマン・小鳥智志(西島秀俊)が部下として転職してくる。また、佐奈のビジネスパートナー・須崎功(杉野遥亮)との恋愛模様にも注目。
【見どころ】
「第1話を見て、映画『マイ・インターン』のような面もあると思いました。西島秀俊さんが、永野芽郁さんのよきメンターになるのでしょう。インスパイア元の作品をどう覆すか、そこからもう一歩踏み込めるかに注目です。スタートアップ企業の現実もけっこうリアルに描かれているように感じました。お仕事部分がリアルな作品はいいものになることが多いので、そこも期待しています」(西森さん)
●『家庭教師のトラコ』(毎週水曜よる10時〜・日本テレビ系)
橋本愛が演じるのは、どんな志望校も合格率100%の伝説の家庭教師・根津寅子。コスプレが趣味で無愛想だが実力は確かという彼女が、年齢も抱えている問題も違う3つの家庭で、母親と子供たちに「正しいお金の使い方」を教えていくヒューマンドラマだ。脚本家とプロデューサーが『家政婦のミタ』を手がけたコンビであることも注目。
【見どころ】
「大ヒットドラマ『女王の教室』や『家政婦のミタ』を手がけた遊川和彦さん脚本なので、驚くような展開やメッセージが描かれるのではないでしょうか。教育に関係していること、家庭に外部の人間が入ってくるところも先に挙げた2作品を彷彿とさせます。橋本愛さんは地上波民放連ドラ初主演とのことですが、遊川作品特有の非現実的な空気感を漂わせる主人公にぴったりだと思います」(西森さん)
●『テッパチ!』(毎週水曜よる10時〜・フジテレビ系)
陸上自衛隊を舞台に、青年たちの成長と熱き思いを描いた熱血青春ドラマ。防衛省が全面協力し、実際の駐屯地での撮影や、本物の自衛官がエキストラとして出演する。白石麻衣が防衛大学校を卒業したエリート自衛官・桜間冬美2尉役で出演。定職につかずその日暮らしの生活を送っていた主人公・国生宙(町田啓太)が、ひょんなことから陸上自衛隊の候補生になるところから始まるストーリーだ。
【見どころ】
「『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称・チェリまほ)』で人気爆発した町田啓太さんのゴールデン初主演。町田さんはやさぐれたキャラクターで登場しますが、どのように変化していくのか楽しみです。
同室の仲間たちとの関係性にも注目。同じ劇団EXILEのメンバーである佐藤寛太さんとも、最初はぶつかり合っていますが、きっと何かのきっかけでわかり合えるのでしょう」(西森さん)