夜、そこは妖しげに輝く繁華街に一変する。男女の欲望渦巻く「真夜中の六本木」。そこになぜ、人は吸い寄せられるのか──財界の重鎮も、第一線の人気芸能人も、そしてお金のない若者も、誰もが取りつかれてしまう魔力の源に迫る。【前後編の前編】
「土下座をして謝りなさい」。香川照之(56才)演じる外食企業グループの会長が、竹内涼真(29才)演じる主人公に土下座を迫る──7月7日にスタートしたドラマ『六本木クラス』(テレビ朝日系)のワンシーンだ。
このドラマはNetflixで人気の韓国ドラマ『梨泰院クラス』のリメイク版。絶望の淵に沈んだ主人公が復讐を誓い、巨大企業に立ち向かっていくストーリーだ。
初回放送は平均世帯視聴率9.6%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)をマークし、「香川照之」がツイッターのトレンド入りした。
「香川さんが出演した『半沢直樹』(TBS系)の土下座要求シーンを思い出した人が多かった。実際の撮影現場ではアドリブ連発の香川さんに竹内さんが必死に食らいついていて、2人のかけ合いも見ものです」(テレビ誌記者)
今回、テレ朝が特に力を入れているのが、タイトルにもある六本木での撮影だ。
「テレ朝はお膝元である六本木での撮影にこだわっているそうです。そもそも交通量が多くて撮影許可がなかなか下りにくいエリアなのに、しっかりロケをしている。これには他局も“このドラマはすごい”と密かにチェックしています」(前出・テレビ誌記者)
にわかに注目を集める六本木。常に最先端を走り、人々を魅了してやまないエリアの栄華の裏側には60年にわたる人々の熱い交流があった。
キャンティは真夜中の教室だった
「この地に松の大樹が6本あった」
「青木や上杉など、木にちなんだ大名屋敷が6つあった」
六本木という地名の由来には諸説がある。田畑の広がるのどかな地域だった六本木界隈は江戸時代に武家屋敷街として発展し、明治期には旧陸軍の施設が相次いで建築された。
太平洋戦争で米軍の空襲によって焼け野原になり、戦後は米軍が旧陸軍の施設を接収した。周囲には米軍用のキャバレーやダンスホール、バーやレストランが立ち並び、かつての武家屋敷街は「アメリカの街」へと変貌した。
しかし1958年に接収が終わり、翌年にテレビ朝日の前身である日本教育テレビが開局すると六本木は生まれ変わる。
「テレビ関係者や芸能人、そうした華やかな人々に憧れる若者たちがこぞって六本木に集うようになりました。何をするにもお金がかかる銀座と違い、六本木は若くてお金がなくてもセンスさえあれば、人と交流して楽しむことができた。この街に深夜までたむろする若者たちは、いつしか『六本木族』と呼ばれるようになりました」(ベテラン芸能記者)