MeToo運動が広まり、映画界をはじめとする「性暴力問題」の告発が相次ぐなか、それを報じる新聞社が見ないふりをしている性被害があった。その現場は、高校球児の聖地・甲子園。当事者たちが実名で告発する。【前後編の前編】
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夏の甲子園を目前に、全国各地で高校野球の地方大会が開催されている。
今年の甲子園は3年ぶりに観客の入場制限が撤廃されて盛り上がることが予想されるが、その陰で浮上したのが、女性記者が被る性被害問題だ。
〈詳細を初めて知って衝撃。私も甲子園で担当チームの取材中に被害を受けたから。表に出ていないだけで、女性記者への性加害はこれまでもけっこう起きているのではないだろうか〉
7月4日にツイッターでそう発したのは元朝日新聞記者の柴田優呼氏だ。高校球児たちが夢見る聖地で性被害が起きているという告発には多くの反応が寄せられている。
柴田氏が改めて本誌・週刊ポストの取材に答えた。
「元朝日新聞記者が甲子園で性被害を受けたとウェブサイトで2年前に書かれたのを見て、他人事ではないと感じたので問題提起した次第です。これはセクハラレベルでは済まないことなので、私は『性被害』としています」
1980年代後半に朝日新聞に入社した柴田氏は、若手の頃に高校野球担当になった。地方大会から取材していた高校が甲子園に出場したため、チームに同行し、同じ宿舎に滞在することになった。
その宿舎で監督と1対1で取材中、突然抱きつかれそうになったという。
「普段は礼儀正しく丁寧に接してくださる監督だったので、あまりの豹変ぶりに驚きました」(柴田氏)
その後、どうすればいいのか一人で悶々とした。
「自分なりに監督やコーチ、選手たちに食い込んでいたつもりだったので、記者として行動していたのに突然、性加害の対象にされてしまったことがショックでした。年の近い男性コーチに話したら驚いて本気で心配してくれたので心理的にかなり救われましたが、職場は筆舌に尽くしがたいほど男社会だったので、上司や同僚に相談できませんでした。言っても無下にされるだけだろうと、これまでほとんど口にしたことはありませんでした。
私の経験より、(元朝日記者が2年前に書いた性被害が)ずっと酷いものになっており、今も同じような、もしくはより酷くなっている可能性があるのではないかと危惧しています」(同前)