「フルロナ」の脅威とは(イラスト/斉藤ヨーコ)
今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、新型コロナウイルスとインフルエンザに同時感染する「フルロナ」についてお届けする。
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今、日本では新型コロナウイルスの感染者数が急増し、BA.5という新しい変異ウイルスによる第7波に入っています。一方、南半球のオーストラリアでは、インフルエンザの検出数が過去5年間の平均を上回って増えています。
新型コロナが流行し始めた2020年/2021年のシーズン以降、世界的なインフルエンザの流行は見られませんでしたから、インフルエンザの免疫を持った人が減って、さらにコロナ対策が緩和されたことなどが影響していると思われます。結果として、オーストラリアでは、インフルエンザとコロナの両方が同時流行しているツインデミックの状況です。
通常であれば、インフルエンザは南半球の半年後に北半球で同様の流行を起こします。ですから、この冬に日本でインフルエンザの流行が想定されます。そして、コロナも冬季に大きな流行を作りやすい傾向があります。つまり、今年の冬、日本でもインフルエンザとコロナの“フルロナ”の流行が起こるリスクが高いのです。
インフルエンザは、1~2日の潜伏期の後に突然の高熱で発症し、頭痛、筋肉痛・関節痛、倦怠感などの症状を出して、その後、喉の痛みや腫れなどの呼吸器症状が出てきます。通常は数日寝込んで、1週間程度で回復しますが、高齢者や乳幼児、妊婦や基礎疾患をもっている方は重症化しやすく要注意です。
日本では、これまでインフルエンザはワクチンがあり、迅速診断キットも普及し、タミフルなどの治療薬が全国の医療機関ですぐに使えるにもかかわらず、毎年流行して1シーズンに約3000人もの犠牲者を出してきました。