国内

深谷隆司氏が安倍晋三氏を悼む 「後を頼みますね」と握手したのが今生の別れに

元通産相・深谷隆司氏が安倍氏を悼む(時事通信フォト)

元通産相・深谷隆司氏が安倍氏を悼む(時事通信フォト)

 安倍晋三元首相が凶弾に斃れた。父・晋太郎氏からの付き合いだった自民党の長老・深谷隆司氏(86、元通産相)が先に逝った後輩を悼む。

 * * *
 私が落選中の1978年、父の安倍晋太郎さんに声をかけていただき、付き合いが始まった。

 晋太郎さんが天下を取る直前に亡くなってしまい、息子が跡を継いだわけだが、2006年に初の戦後生まれの総理大臣になって、最初の予算委員会でのやりとりが思い出深い。

 私が最初の質問で、「御子息のあなたが晴れて総理大臣になられて父上はどんな御心境か、そのお心を思う」と言うと、彼は1994年頃の野党時代に触れ、「多くの自民党議員が失意でしょんぼりするなか、深谷先生は水を得た魚のように厳しく与党を追及して生き生きと闘っておられた」と言ってくれた。

 アベノミクスで景気を回復させたことよりも、私が強く評価するのは「戦後70年談話」だ。

 周辺国から歴史問題を追及され、その謝罪を何回もやってきたが、「あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」と宣言した。

 中国に対してモノを言うようになり、ODAを通じて払ってきたカネもやめた。インドや太平洋地域と連携し、中国の脅威から日本を防衛する体制も構築してきた。日米同盟の強化に取り組み、国民をいかに守るかという点で成果をあげた。

「棺(かん)を蓋(おお)いて事定まる」ということわざがあるが、事件後、各界からの安倍さんに対する評価が非常に高い。感心するのは海外の評価で、西側だけでなく、中国・ロシアも非常に高く評価している。プーチンは「卓越した政治家の命が奪われた」と評した。一貫した安倍さんの姿勢への評価が政治家同士の間では確立していたということだろう。

 それから昭恵夫人と私の娘が大親友という関係もあり、家族ぐるみの付き合いが長年続いていた。自宅を妻と弔問した時もずっと娘が夫人についていた。安倍さんにピアノを教えたのは私の娘婿だ。

 6月27日に、都内で候補者の応援演説に来てくれた安倍さんと会ったのが最後になった。帰り際、普通はグータッチのところを、しっかり手を握って「後を頼みますね」と言われた。これが今生の別れとなった。もちろん、候補者のことだったのだろうが、今考えるとたまらない気持ちになる。

※週刊ポスト2022年7月29日号

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン