〈ゴルフのプレー中、突然倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。前日まで、いつもと何ら変わりがない1日を過ごし、社内外の会議に出席しておりました〉
7月2日、転職サイトの運営などを手がける「ビズリーチ」の多田洋祐社長(享年40)が心不全で急逝し、同社ホームページにこんな訃報が掲載された。多田氏は心臓に持病があったが、〈本人も、まさかこのようなことになるとは想像していなかったのではないか〉と続くように、突然の不幸に社内でも動揺が広がっている。
「レジャー白書2021」によると、2020年のゴルフ人口は約520万人。近年は減少傾向にあったものの、屋外で密を避けられることからコロナを機に人気が再加熱した。
激しい運動がないゴルフは安全と思われがちだが、実は「死を招くスポーツ」である。
ハンデ8のシングルプレーヤーで、プレー中に突然死した76件のケースを独自分析している元日本女子プロゴルフ協会の顧問医・小暮堅三氏が指摘する。
「ゴルフ場1か所につき年間1~1.5人くらいが急病で倒れており、全国で2000件以上。そのうち死に至るのが10分の1ほどなので、年間に200人以上が突然死していることになります」
それほど危険なのは、ゴルフが「ストレス」に深くかかわるからだ。
メジャータイトルを総なめにしたタイガー・ウッズでさえ、精神面が不安定になり一時低迷した。
「スコアを伸ばそう、ライバルに勝とうと意気込むあまり、多大なストレスがかかります。すると血管が過度に収縮して血圧が上がり、血管の脆いところが破れたり詰まったりしてしまう。こうして脳卒中や心筋梗塞による突然死が起こります」(小暮氏)
とりわけ危惧されるのがこれからの季節だ。
人は何もしなくても1日に約900の汗をかくと言われているが、高温多湿の夏本番を迎えると発汗量がさらに多くなる。水分が体外に排出されると血液がドロドロになって血栓ができやすく、脳梗塞や心筋梗塞のリスクがさらに高まる。
夏場のゴルフは死と隣り合わせなのである。