7月2日、転職サイトの運営などを手がける「ビズリーチ」の多田洋祐社長(享年40)が心不全で急逝。ゴルフのラウンド中でのことだった。健康的なイメージがあるゴルフだが、夏場のプレーは「突然死」のリスクが高まるという。ハンデ8のシングルプレーヤーで元日本女子プロゴルフ協会の顧問医・小暮堅三氏は、プレー中に突然死した76件のケースを独自分析している。実際にどんな時に危険がやって来るのか。場面ごとに見ていこう。
・大規模コンペ
大人数が参加するコンペは真剣勝負になりやすく、突然死のリスクが高まる。
「仲間内のラウンドならワイワイ楽しく気軽にプレーできます。しかし大人数のコンペとなると、『○○には負けたくない』との気持ちがストレスに繋がる上、特にレベルが拮抗している場合は競争心から心身の緊張が高まる。飛距離にこだわって力んだスイングをしがちで、これも心臓に大きな負担を与えます」(小暮氏)
・最初のホールと最終ホール
18ホールのうち、最も危ないのがスタートしてすぐのホールと最後のホールだ。
「1番ホールは“最初からミスできない”と緊張感が高まりやすい。また最終ホールは“最後にしっかりまとめたい”との気持ちが強くなってストレスがかかります。特にコンペで順位を争っている場合、最終ホールはそれまで以上に力が入ってしまう」(同前)
・アプローチのミス
小暮氏の統計では、突然死が最も多いのはアプローチショットをミスした直後だという。
「現に私の目の前でアプローチショットをミスして倒れた人が2人います。アプローチをミスしてグリーンを大きく外すと挽回が難しくなるので、張り詰めた緊張とその後の落胆で血圧が大きく上下する。その瞬間に倒れてしまうのです」(同前)
・パッティング
「パターを振るのに体力はいりませんが、緊張と集中で血圧が上がりやすい。グリーンに乗ったら2パットでカップインすることが常識とされるから、ゴルフが上手な人ほど『3~4パットは恥だ』となる。スコアが良い人ほど重圧で倒れやすくなります」(同前)
順天堂大学医学部特任教授で心臓外科医の天野篤氏によれば、パットはドライバーに比べて体温が上昇しやすく、それが突然死の要因になりうるという。
「1.5mくらいのパットが一番危ない。どうしても入れたいからあちこちからラインを見るわけです。日傘があればともかく、炎天下でグリーンの照り返しを受け続けることで、体温上昇の要因を自ら作り出している」(天野氏)