終わりそうで終わらないコロナ禍。私たちの生活も知らぬうちに変化している。千葉県に住む会社員の高野春子さん(52才・仮名)が明かす。
「サプリ頼みの生活になりました。運動不足で3kgも太ったから体脂肪を減らしたり、糖質を吸収しづらくするサプリを探してのみ始めたのがきっかけ。リモートワークで目が疲れて肩も凝るから、ビタミンEとブルーベリー由来のサプリを摂っています」
コロナ禍による運動不足やダイエットなどでサプリメントをのむ人が増えている。富士経済の調査によると、2021年の健康志向食品の市場は1兆5431億円で、前年比3.4%増と右肩上がり。ストレス緩和や睡眠サポートのほか、栄養バランスをとる製品が特に好調だという。
感染症の蔓延により、健康意識は高まっている。サプリメントを含む健康食品に頼りたくなる気持ちは理解できる。しかし、摂りかたによっては、逆効果となる場合もある。国立健康・栄養研究所の研究員が指摘する。
「健康食品を薬と併用して健康被害を起こすケースも少なからず報告されています。健康食品は薬とは違って、消費者の自己判断で使われることが多いうえ、原材料や成分などが明確ではない。似た名称の製品でも中身が大きく異なり、健康被害の原因究明や対策が難しいです」
医薬品であれば厚生労働省の厳重なチェックを通り抜けなければ承認されない。しかし、健康食品は「食品」に分類されるため自由度が高い。すなわち“玉石混交”とも言え、「健康食品だから大丈夫」と思って気軽にのむと、思わぬしっぺ返しをくらう。前出の研究員が続ける。
「血栓(血の塊)の形成を予防するワルファリンという薬をのんでいる人がクロレラや青汁をのむと、成分のビタミンKによって薬効が減弱することが報告されています。そもそも、青汁はケールや大麦若葉、アシタバ、モロヘイヤなどを原料とする健康食品の俗称。詳細な定義もありません」
ワルファリンの薬効が減弱すれば、血が固まって脳卒中や心筋梗塞になる危険が高まる。健康のためを思ってのんでいる健康食品が、逆に命を奪うことすらあるのだ。
西日本のある医師が明かしたのは、多くの現代女性が無縁ではいられない事例だ。
「高齢女性患者がだるくて食欲がないうえ、常に眠気がとれないと訴えていました。血液検査をしたところ高カルシウム血症であることが判明。話を聞くと活性型ビタミンD3製剤が処方されていたのに、カルシウムのサプリメントをのんでいたのです」
どういうことか。薬剤師の三上彰貴子さんが解説する。