歴史ある本堂の中央に鎮座する、黄金色に輝く阿弥陀如来像──7月18日、東京・築地本願寺には寺院を見学する観光客に交じり、神妙な表情の人々がいた。ひとり、またひとりと静かに祈りを捧げる人が現れ、去っていく。なかには、涙を流している若い女性の姿もあった。
その日は2020年にこの世を去った三浦春馬さん(享年30)の命日だった。三回忌を迎えた同日午前、生前所属していた事務所のホームページにあるお知らせが掲載された。メッセージの主は三浦さんの母親だ。
《事務所の方々にたくさん相談し、このたび築地本願寺に納骨させていただくことを決めました。これが皆様のことを何よりも大切に思っていた彼のために、今私ができることだと思っております》
それは、急逝から丸2年、ファンが待ち望んでいたものだった。直後、築地本願寺のホームページにはサーバーがダウンするほどアクセスが集中、冒頭のように寺院にも多くのファンが押し寄せた。築地本願寺について、宗教専門誌『宗教問題』の編集長・小川寛大さんが解説する。
「築地本願寺は日本の伝統仏教で最も信者数の多い、浄土真宗本願寺派の寺院です(※信者数は文化庁編の『宗教年鑑』による)。関東での教えを広める拠点として、1617年に創建されました。広い本堂と敷地を持ち、何千人規模の法要も行えることから、芸能人や政治家の斎場として選ばれることも多い」
“聖地”となるケースもある。
「本堂の片隅には、1998年に築地本願寺で葬儀を行ったX JAPANのhideさん(享年33)の追悼コーナーがあります。この一角はファンが写真や手紙を持ち寄って自然発生的にできたものです」(芸能関係者)
今回、多くのファンが発表と同時に遺骨の元へと向かったのには理由がある。別の芸能関係者が明かす。
「所属事務所はたびたび、お別れ会の計画をアナウンスし、実現に向けて動いていた。しかし、コロナ禍で実現に至らず、一周忌に追悼のウェブページが開設された後は進展もないようでした。ファンにとっては、悲しみの気持ちをどこに向けていいのかわからない状態だったんです。なんとか三浦さんの魂に手を合わせたいと思い、ドラマのロケ地や劇場を訪れたりした人も多かったようです」