国内

バブル期の歌舞伎町で起きた銃撃事件 目撃者が振り返る本当に「怖かったこと」

多くの人が献花に訪れた(時事通信フォト)

安倍元首相銃撃によって思い出されたこととは?(時事通信フォト)

 大きな事件が発生すると、テレビのニュースではその映像が繰り返し報じられる。その映像を見るたびに、自身が経験した過去の衝撃的な出来事が脳裏によみがえる──そんな人もいるかもしれない。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、安倍元首相銃撃によって思い出された、とある出来事を振り返る。

 * * *
 安倍晋三元首相(享年67)が凶弾に倒れたあの日の昼から、のべつ流された最後の姿と銃声。「看護師さんいますか、お医者さん、いたら助けてください!!」という絶叫がいまも怖くてたまらない。あの映像を見ると、私は30年以上前の出来事を思い出すの。

 24才で結婚して28才で離婚。離婚後すぐに同棲した男に借金を背負わされて、どうにも生活が立ち行かなくなって別れたら、世はバブル期。私のようなフリーライターにも、こなしきれないほどの仕事が押し寄せてきて、借金はあっという間に返済。勢いに乗った私は仲間のライターと新宿・歌舞伎町に事務所を開いた。

 なぜ、歌舞伎町か。編集プロダクションを開業するのにふさわしい場所とはおよそ思えない。男女のすったもんだにほとほと嫌気がさしていた30才の私は、単純に何かに虚勢を張りたかったんだと思う。

 事務所の鍵を渡しながら、その雑居ビルの管理人は心配そうに言った。

「いいですか。ここにいる人の8割は暴力団関係者です。そのことはくれぐれも忘れないでくださいね」

 若く青い私を気遣った言葉だったけど、破れかぶれの女は怖いもの知らず。いかにもコワモテな“その業界の人”と狭いエレベーターに乗り合わせても、「こんにちは~。雨、よく降りますねぇ」とか「今日は蒸しますね」などと、気の置けないご近所同士の声かけをしていたの。そんなコミュニケーションに慣れていない彼らは「おっ、おっ。よく、降り、ます、ね」とぎこちない言葉を返してくれたけど、いかつい外見に反してとてもデリケートな人たちに見えた。

 ま、それ以上、互いに干渉し合うこともないし、歌舞伎町の仕事場はとにかく想像以上に居心地がよかったの。

 繁華街の昼はやけに静かで仕事に集中できたし、夜になったらなったで、窓越しに聞こえてくる盛り場のざわめきが徹夜仕事の追い風になる。仕事に飽きて窓に近づけば、下の暗い路地で「だから金払えって言ってんだよッ」と凄む女と、「金、金ってそれしか言えねぇのかよッ」と言い返す男の切羽詰まったやり取りが聞こえたりしてね。バブルの華やかさの裏側で蠢く、私好みの泥臭いドラマが、狭い部屋にいながらにして見聞きできる。それが面白くてたまらなかった。だから、歌舞伎町が怖いと思ったことは一度もなかった。あの事件に遭遇するまでは──。

関連記事

トピックス

大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
石川県の被災地で「沈金」をご体験された佳子さま(2025年4月、石川県・輪島市。撮影/JMPA)
《インナーの胸元にはフリルで”甘さ”も》佳子さま、色味を抑えたシックなパンツスーツで石川県の被災地で「沈金」をご体験 
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン
隣の新入生とお話しされる場面も(時事通信フォト)
《悠仁さま入学の直前》筑波大学長が日本とブラジルの友好増進を図る宮中晩餐会に招待されていた 「秋篠宮夫妻との会話はあったのか?」の問いに大学側が否定した事情
週刊ポスト
新調した桜色のスーツをお召しになる雅子さま(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
雅子さま、万博開会式に桜色のスーツでご出席 硫黄島日帰り訪問直後の超過密日程でもにこやかな表情、お召し物はこの日に合わせて新調 
女性セブン
被害者の手柄さんの中学時代の卒業アルバム、
「『犯罪に関わっているかもしれない』と警察から電話が…」谷内寛幸容疑者(24)が起こしていた過去の“警察沙汰トラブル”【さいたま市・15歳女子高校生刺殺事件】
NEWSポストセブン
豊昇龍(撮影/JMPA)
師匠・立浪親方が語る横綱・豊昇龍「タトゥー男とどんちゃん騒ぎ」報道の真相 「相手が反社でないことは確認済み」「親しい後援者との二次会で感謝の気持ち示したのだろう」
NEWSポストセブン
「日本国際賞」の授賞式に出席された天皇皇后両陛下 (2025年4月、撮影/JMPA)
《精力的なご公務が続く》皇后雅子さまが見せられた晴れやかな笑顔 お気に入りカラーのブルーのドレスで華やかに
NEWSポストセブン
大阪・関西万博が開幕し、来場者でにぎわう会場
《大阪・関西万博“炎上スポット”のリアル》大屋根リング、大行列、未完成パビリオン…来場者が明かした賛&否 3850円えきそばには「写真と違う」と不満も
NEWSポストセブン
真美子さんと大谷(AP/アフロ、日刊スポーツ/アフロ)
《大谷翔平が見せる妻への気遣い》妊娠中の真美子さんが「ロングスカート」「ゆったりパンツ」を封印して取り入れた“新ファッション”
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市早苗が激白「私ならトランプと……」ほか
週刊ポスト