長さ約40cm、高さ約20cm。金属製の筒2本に木の板を添え、黒い粘着テープでぐるぐる巻きにしてある。カプセルのような容器には弾丸が6発入り、後方からは電気コードが延びる──これが日本の憲政史上最長の在任期間を誇る、元首相の命をいとも簡単に奪った「手作り」の銃である。
日本中を震撼させた安倍晋三元首相(享年67)の銃撃事件。誰もが驚いたのは、凶器の銃が手製だったことだ。殺人容疑で逮捕された無職の山上徹也容疑者(41才)の自宅からは、手製の銃7丁が見つかり、うち1、2丁は作りかけだった。
「自分で作り方を調べて部品を買い、ネットで購入したものもある」
この山上容疑者の供述通り、銃は市販の材料で作ることができる。銃器評論家の津田哲也さんが指摘する。
「材料はホームセンターで、工具は中学校の技術室にあるもので簡単に作れます。発射薬は市販されている花火の火薬、弾丸はパチンコ玉や工業用のベアリングでも代用できてしまう。発射装置は、本物の銃のような雷管式だと一般人には製造困難ですが、山上容疑者が作った電着式は、小学校の理科の知識があれば作れてしまうような単純な機構です」
銃の製造法をどのように学んだのか。山上容疑者は「YouTubeの動画を参考に銃を製造した」と供述した。これについて、ITジャーナリストの三上洋さんが指摘する。
「YouTubeは銃の製造法を投稿することを禁じています。ところが、実際にはYouTubeや一部のサイトでは銃の作り方がいくつも投稿されており、一般人でも簡単に検索・閲覧できます。しかも、YouTubeはアメリカのもの。日本政府や警察は取り締まることができず、規制の方法はありません」
実際にYouTubeに投稿された海外の動画を見ると、「銃の作り方を紹介します」という英語のナレーションとともに、その作り方を順を追って丁寧に説明している。当然ながら、こうした手製の銃はアメリカでも社会問題化している。
「『ゴーストガン(幽霊銃)』と呼ばれる無登録の手製銃について、バイデン政権は規制を強化する方向です。業者が製造した正規の銃にはシリアルナンバーが入り、犯罪が起きた際に入手経路などを把握できますが、誰でも入手できる材料で作るとシリアルナンバーがなく、追跡が難しくなっています。
今後は日本でもゴーストガン対策が必須になるでしょう。ですが、まずは火薬や弾丸の入手規制を強化すべきです」(三上さん・以下同)
※女性セブン2022年8月4日号