安倍晋三・元首相の銃撃が報じられた7月8日午後、素早い動きを見せたのが、ネットやスマホアプリで個人売買をする一部のユーザーたちだった。
「主要都市の駅前などで号外が配られると、数分後にはフリマサイトに1000~2000円の値を付けた号外が複数出回りました。夕刻に『死亡』を伝える号外が出ると、2紙をセットにして5000円以上で販売する人も現われた」(ネットニュース記者)
その後も「安倍グッズ」の出品は止まらず、オークションサイトでは、関連商品の落札が前月の10件から200件以上に急増した。
特に高値を付けているのは、安倍氏の名刺や、揮毫が印刷されたサイン色紙、選挙時のポスターなど。これまで2000~5000円程度で取引されていた色紙は、現在、4万~6万円まで跳ね上がっている。
フリマアプリ・ネットオークションガイドの川崎さちえ氏が語る。
「最近では、俳優の三浦春馬さんや竹内結子さんが亡くなった直後、ポスターや雑誌、サイン色紙などが以前の数倍の価格で取引された事例がありました。ただ政治家の没後、安倍さんのように多くの商品が高額売買されたケースは私の記憶にはありません」
自民党関係者も複雑な表情を浮かべる。
「われわれのところにも、支援者を名乗る方から『安倍先生のグッズは残っていないか』といった問い合わせがあった。安倍先生の死を悼み、グッズを手元に置きたい気持ちは理解できるが、法外な値段で取引されるのはいかがなものか。フリマサイトでは『事件現場で採取した』とする石が落札されたとも聞く。事件に便乗し、怪しげなものやモラルに反する品々が出回る可能性も捨てきれない」
実際、オークションサイトでは、通夜・葬儀で配られたものとの説明が付された「香典返し」(今治タオル)の出品も確認された。
「現在、高額で取引されている商品も、時間の経過とともに値が下がることが予想されます。ただし、9月に行なわれる予定の国葬のタイミングで再び高値を付ける可能性がある。国葬で参列者に渡された品々が、ネットで売買されることも容易に想像できてしまいます」(前出・川崎氏)
ユーザーのモラルが問われる。
※週刊ポスト2022年8月5・12日号