参院比例での改選議席で野党第一党の座を掴んだ日本維新の会。その比例でトップ当選を果たした石井章氏は、数々の問題発言で物議を醸してきた人物だ。松井一郎・代表ら幹部はこれまで不問に付してきたが、このたび持ち上がった“税金還流疑惑”についても、まだかばい続けるつもりか。【前後編の前編】
参院選で大きく議席を伸ばして国政に影響力を強めた日本維新の会。
松井代表は安倍晋三・元首相の「国葬」を決めた岸田文雄・首相に対し、「反対ではないが、賛成する人ばかりではない。礼節を尽くすべき元首相だと思うが、その結果、遺族の負担にもなるということはよく考えてもらいたい」と注文をつけるなど、早くも存在感を発揮している。
その維新が参院選でアピールしたのが「政治資金の透明さ」だ。
〈身を切る改革、実行中。〉というスローガンを掲げて比例代表候補に元女子マラソン選手の松野明美氏ら著名人を並べ、選挙戦では各候補が国会議員に支給される文書通信交通滞在費(調査研究広報滞在費に改称)を使途公表の義務がない「第2の給料」と批判、維新の所属議員は全員自主的に使途を公表しているとアピールした。その結果、維新の比例代表の得票は野党第一党の立憲民主党や公明党を上回り、自民党に次ぐ8議席を獲得して躍進した。
そうした“クリーン維新”の比例代表で並み居るタレント候補を抑えてトップ当選したのが石井章・参院議員だ。
石井氏といえば、参院選の新人女性候補の応援で「顔で選べば一番」と発言して謝罪に追い込まれ、維新の創設者である橋下徹・元大阪市長の出身地について「差別を受ける地区」と発言(週刊ポスト2022年6月20日発売号既報)して物議を醸すなど舌禍が多い人物として知られる。
舌禍問題で公認取り消しも取り沙汰されたが、松井代表は、「人間誰しも口を滑らせることはある」と石井氏をかばった。
「参院2期目で衆院議員の経験もある石井さんは候補者発掘や選挙組織作りがうまく、若い議員が多い維新では貴重な存在です。松井代表にも目をかけられ、選挙指南役として党内で頭角を現わしつつある」(維新関係者)
知名度はまだまだだが、躍進する維新の選挙を支える政治家といっていい。
しかし、石井事務所の元スタッフはこう語る。
「維新は政治資金の透明さを謳っているが、石井議員は政治資金を身内に還流させている疑惑がある」
そこで週刊ポスト取材班は石井氏の政党支部(日本維新の会参議院比例区第4支部)の政治資金収支報告書(2019~2021年公表の3年分)をもとに、地元に入って政治資金の使途について検証作業を進めた。すると石井氏の報告書に数々の疑惑が浮上した。