参院比例での改選議席で野党第一党の座を掴んだ日本維新の会。その比例でトップ当選を果たした石井章氏は、数々の問題発言で物議を醸してきた人物だ。松井一郎・代表ら幹部はこれまで不問に付してきたが、このたび持ち上がった“税金還流疑惑”についても、まだかばい続けるつもりか。【前後編の後編。前編から読む】
“幽霊会社”への支出
政治資金の不透明な支出先はまだある。
石井氏の政党支部は政党交付金から毎月「車両リース」8万2000円(年間98万4000円)を「取手企画」なる会社に支払っている。
この会社の所在地を訪ねると、またもプレハブの建物で「日本維新の会」という大きな貼り紙が壁にあり、石井氏のポスターがベタベタ貼られ、駐車場に緑色の維新の宣伝カーが2台停まっていた。
“石井氏の事務所じゃないか”
そう感じて取材しようと玄関に回ると、建物の中に人の気配はない。今度は郵便受けを見て驚かされた。
「取手企画」「サンコーポレーション」など6社の名前が並び、その上に、〈この建物にはスタッフが常駐しておりませんのでお荷物につきましては恐れ入りますが石井あきら事務所で受け取り致します〉という貼り紙があり、転送先としてコンクリート2階建ての立派な石井事務所の住所が書かれていた。
登記簿謄本を確認すると、この土地も石井氏が購入し、現在は石井氏が昨年4月まで役員を務めていた“ファミリー企業”(現在は石井氏の息子が役員)の所有となっている。
取手企画代表取締役のC氏は、取手市にある介護施設の管理者で、取材申し込みのため施設に電話を入れると、「Cはもうここにはいません。グループ内の人事異動で今は石井事務所にいます」という説明だった。
C氏の携帯に電話をかけると、石井事務所に勤めていることを認めた上で、「全部石井事務所を通してもらっていいですか」と話した。
「何もかも全部石井さんのもの」
と語ったサンコーポレーション取締役のB氏の言葉の意味が腑に落ちた。郵便受けに書かれている会社はいずれも石井氏の“ファミリー企業”なのだろう。
“幽霊会社”への支出もあった。石井氏の政党支部は「借料損料」として2020年に「大森建設工業」という会社に33万円を支払ったが、政治資金収支報告書に記載された所在地は亡くなった元秘書が住んでいた部屋で、法人登記もされていない。誰に、何のカネを払ったのか不明なのだ。