今季、ヤクルト・村上宗隆(22)は「シーズン最多本塁打」の記録更新を果たせるのか──心強いチームメイトもコロナ感染から戻ってくるなかで、遥か高い「壁」を越えるために必要なカギを探った。
セ・リーグの首位を独走するヤクルトが、ようやく“平常運転”に戻れそうだ。一、二軍合わせて29人が新型コロナに感染。山田哲人(30)や塩見泰隆(29)ら主力も相次いで戦列を外れ、苦境に陥ったが、メンバーが戦線に復帰してきている。
大ピンチだったチームで「不動の4番」として孤軍奮闘し続けたのが、村上である。
打率は.319で88打点をマーク(7月20日終了時点、以下同)。ホームランは、両リーグ断トツとなる32本となっている。
3度の3冠王を獲得している落合博満氏も、テレビ番組で「今現在(最高の4番打者)って言われれば、やっぱり村上になるんじゃないですか」と即答した。
ヤクルトで4番打者として活躍した野球評論家の広澤克実氏は、村上の凄さについてこう語る。
「広いバンテリンドームナゴヤでも6試合で5ホームランを放っていることからわかるように、球場の広さに関係なくしかも広角に打てるのが優れているところ。ホームランになる打球角度は25~26度だと言われていますが、村上はその幅がもっと広い。並の打者なら外野フライになるところでも、彼はパワーがあるのでスタンドまで届くことが多いんです」
そんな突出した才能を持っている村上に期待されるのが、「シーズン最多本塁打」の記録更新だ。
これまでの最多記録は、バレンティンが2013年に樹立した60本だが、村上は6月に両リーグ最多となる14本を放っている。
シーズンは残り約2か月で、絶好調時のペースで量産態勢が続けば、60本の記録を塗り替え、夢の「シーズン70本」も見えてくるのではないか──そんな期待を抱かせるバッターである。
「固め打ち」するために
もちろん、前人未到の記録が高い壁であることは間違いない。バレンティンが60本を達成するまで、長らく破られることがなかった最多本塁打記録が、1964年の王貞治の「55本」だった。
1962年に巨人に入団し「エースのジョー」として活躍した城之内邦雄氏が当時を振り返る。
「1964年はV9が始まる前年で、このシーズンは大洋と阪神の2チームが抜け出していた。ジャイアンツは前年19勝の伊藤芳明さんが故障で出遅れ、僕も開幕直後から7連敗。優勝争いから遠ざかっていました。
首位争いに絡んでいれば、王さんのマークも厳しくなっていたかもしれないけど、他球団の目が巨人以外に向いていたからね。王さんも勝負されていたし、ノビノビと打てたから記録を達成できたんじゃないかな」