ライフ

今も世界各地で発生するコレラ ウクライナ・マリウポリでは流行の危険性

「コレラ」の脅威とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

「コレラ」の脅威とは(イラスト/斉藤ヨーコ)

 今もその対応に悩まされている新型コロナウイルスだけでなく、人類は様々な感染症とともに生きていかなければならない。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、ウクライナで流行が危険視されている「コレラ」についてお届けする。

 * * *
 ウクライナのマリウポリで上下水道が戦闘で破壊されたことで、コレラの流行の危険性が指摘されています。

 コレラは感染者の便で汚染された水や食物を口から摂ることで感染します。病原菌はビブリオ・コレラという細菌で、コンマ型で鞭毛を振って動きます。感染者の約8割は症状を出さないのですが、発症した患者の2割は重症な脱水を伴った下痢症を発症し、重症患者となって適切な治療がない場合の致死率は50%に上ります。

 潜伏期は約1日と短く、初期は普通の下痢便から始まり、後には水分だけが出て便の色も匂いもなくなります。これがコレラ特有の米のとぎ汁様の灰白色の水様性便です。重症となってしまうと1日に10リットルから数十リットルもの下痢を起こし、激しい嘔吐とひっきりなしの下痢で重い脱水症状と血漿中の電解質異常をきたします。そうなると手足の筋肉に痛みを伴う、強い痙攣が起こります。このような場合、点滴による輸液で水分を補い、適切な抗菌剤の投与などの治療を速やかに受けることが必要で、そうでない場合には死に至ることもあるのです。

 コレラには経口ワクチンがありますが、2回接種してもその効果は数か月程度なので、感染防御には有効なものの、コレラ対策の追加手段に留まっています。そして現在も、アジアや中東、中南米などの地域を中心に世界各地でコレラの発生・流行があります。流行地では夏季に患者発生が多く、水の塩素消毒が行なわれている先進国では発生が少なくなります。

 流行を起こす主なコレラ菌には、アジア型とエルトール型があります。アジア型は古典型とも呼ばれ、激甚な症状で19世紀にパンデミックを繰り返しました。一方、エルトール型は病原性がマイルドで、現在主として流行しているのは幸いにもこのエルトール型です。しかし、アジア型コレラでも患者の発生があり、無くなったのではありません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

アメリカの実業家主催のパーティーに参加された三笠宮瑶子さま。写っている写真が物議を醸している(時事通信フォト)
【米実業家が「インスタ投稿」を削除】三笠宮瑶子さまに海外メーカーのサングラス“アンバサダー就任”騒動 宮内庁は「御就任されているとは承知していない」
NEWSポストセブン
11月に不倫が報じられ、役職停止となった国民民主党の玉木雄一郎代表、相手のタレントは小泉みゆき(左・時事通信フォト、右・ブログより)
《国民・玉木代表が役職停止処分》お相手の元グラドル・小泉みゆき「連絡は取れているんですが…」観光大使つとめる高松市が答えた“意外な現状”
NEWSポストセブン
10月末に行なわれたデモ。参加者は新撰組の衣装に扮し、横断幕を掲げた。巨大なデコトラックも動員
《男性向けサービスの特殊浴場店が暴力団にNO!》「無法地帯」茨城の歓楽街で「新撰組コスプレ暴排デモ」が行なわれた真相
NEWSポストセブン
秋田県ではクマの出没について注意喚起している(同県HPより)
「クマにお歌を教えてあげたよ」秋田県で人身被害が拡大…背景にあった獣と共存してきた山間集落の消滅
NEWSポストセブン
姜卓君被告(本人SNSより)。右は現在の靖国神社
《靖国神社にトイレの落書き》日本在住の中国人被告(29)は「処理水放出が許せなかった」と動機語るも…共犯者と「海鮮居酒屋で前夜祭」の“矛盾”
NEWSポストセブン
公選法違反で逮捕された田淵容疑者(左)。右は女性スタッフ
「猫耳のカチューシャはマストで」「ガンガンバズらせようよ」選挙法違反で逮捕の医師らが女性スタッフの前でノリノリで行なっていた“奇行”の数々 「クリニックの前に警察がいる」と慌てふためいて…【半ケツビラ配り】
NEWSポストセブン
「ホワイトハウス表敬訪問」問題で悩まされる大谷翔平(写真/AFLO)
大谷翔平を悩ます、優勝チームの「ホワイトハウス表敬訪問」問題 トランプ氏と対面となれば辞退する同僚が続出か 外交問題に発展する最悪シナリオも
女性セブン
2025年にはデビュー40周年を控える磯野貴理子
《1円玉の小銭持ち歩く磯野貴理子》24歳年下元夫と暮らした「愛の巣」に今もこだわる理由、還暦直前に超高級マンションのローンを完済「いまは仕事もマイペースで幸せです」
NEWSポストセブン
医療機関から出てくるNumber_iの平野紫耀と神宮寺勇太
《走り続けた再デビューの1年》Number_i、仕事の間隙を縫って3人揃って医療機関へメンテナンス 徹底した体調管理のもと大忙しの年末へ
女性セブン
白鵬(右)の引退試合にも登場した甥のムンフイデレ(時事通信フォト)
元横綱・白鵬の宮城野親方 弟子のいじめ問題での部屋閉鎖が長引き“期待の甥っ子”ら新弟子候補たちは入門できず宙ぶらりん状態
週刊ポスト
大谷(時事通信フォト)のシーズンを支え続けた真美子夫人(AFLO)
《真美子さんのサポートも》大谷翔平の新通訳候補に急浮上した“新たな日本人女性”の存在「子育て経験」「犬」「バスケ」の共通点
NEWSポストセブン
自身のInstagramで離婚を発表した菊川怜
《離婚で好感度ダウンは過去のこと》資産400億円実業家と離婚の菊川怜もバラエティーで脚光浴びるのは確実か ママタレが離婚後も活躍する条件は「経済力と学歴」 
NEWSポストセブン