体調に異変を感じた時にお世話になる「薬」。しかし薬とて万能ではなく、食べ物やサプリメントとの組み合わせによっては、効果が消えたり、むしろ体調が悪くなることもあるという。そして当然ながら「薬」と「薬」にも危険な組み合わせがある。特に日本は「多剤併用」をしている人は多く、その影響で徘徊や幻覚、せん妄を起こすなど認知機能の低下も指摘される。
しかし、国民皆保険の日本では安価で手に入る薬に、患者も医師も頼りがちだ。腰痛は整形外科、腹痛は内科、喉が痛ければ耳鼻咽喉科へと多くのクリニックに同時にかかる人も珍しくなく、それぞれで処方される薬によって気づかぬうちに“NG併用”をしていることもある。
「薬同士のNG例はかなり多く存在します。最近は『お薬手帳』が普及して防げるようになってきましたが、自分で買った市販薬は記録しないことが多いので、特に注意を」
そう話す薬剤師の資格を持つライターの高垣育さんは、以下のような例を挙げる。
「ARB、ACE阻害薬という種類に分類される降圧剤をのんでいる人がNSAIDsと呼ばれる種類の解熱鎮痛剤を併用すると、薬剤性腎障害を起こすことがある。腎臓への血流が減少し、短期間のうちに腎臓の働きが急激に低下してしまうのです。尿が少なくなったり、むくみやだるさなどを感じたりします」
なじみ深い多くの解熱鎮痛剤がNSAIDsに該当する。ニューキノロン系抗生物質も一部のNSAIDsと相性が悪いとして高垣さんが続ける。
「めまいや震え、頭痛、手足のしびれ、ふらつきのほか、全身に痙攣を生じることもある。NSAIDsによって中枢神経の抑制作用が障害され、中枢神経細胞の興奮が劇的に増大して痙攣が誘発されると考えられています」