ユニクロ、アマゾンなどへの潜入取材で知られるジャーナリスト・横田増生氏が、参院選東京選挙区に出馬した維新候補の選挙ボランティアとして潜入レポートした週刊ポスト2022年7月29日号での記事は大きな反響を呼んだ。内側から見た維新の問題点は、まだまだある。その“ハリボテ”ぶりとは──。(文中敬称略)【前後編の後編。前編から読む】
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そうした杜撰な面は、維新の会が主要な政策を策定する過程にも影を落とす。
選挙期間中、海老沢由紀は街頭演説のマイクを握るたび、日本の少子高齢化を憂慮する数字を挙げるのが常だった。
「去年生まれてきた赤ちゃんの数は81万人だったんです。私が子どもの頃は、200万人を超えていました。それが、だんだん減ってきています。それに対し、年金生活者は4000万人を超えます。このまま少子化が進めば、より少ない若者で、高齢者を支えることとなり、いずれは支えきれなくなります」
少子化の原因は、日本では教育費がかかりすぎるので、親が安心して子供を産み育てることができないことにある。
「親の収入に関係なく、子供が自分たちの道を切り開いていける社会にしたいんです。そうした政策を実現できるのは日本維新の会だけなんです」と海老沢は力を込める。
教育の無償化の実践において先頭を走っているのが、維新の会が政権運営をする大阪市と大阪府であり、その実績を踏まえ、教育の無償化を全国に普及させたい、と海老沢は訴える。
大阪の少子化対策の実績として挙げるのは、大阪市が行なった小中学校の給食の無償化だ。
日本維新の会の代表であり、大阪市長の松井一郎は東京でこう言って胸を張った。
「2年前から、大阪市では小中学校の給食の無償化をやったんです。増税はしていませんよ。行政の無駄をなくしていくことで、給食費無償化の財源が生まれたんです」
もう一つは、所得制限付きの私立高校の学費の無償化。最後は、これも所得制限付きの大阪市立大学と大阪府立大学の学費の無償化だ。
この3点について反論するのは、関西学院大学法学部の教授である冨田宏治だ。
「大阪市の給食の無償化というのは、新型コロナ対策として2020年から時限的に行なわれた緊急措置にすぎません。財源も改革で捻出したわけではなく、財政調整基金というこれまでのたくわえを取り崩したにすぎません。さらに言えば、来年23年度以降、学校給食の無償化が継続されるかどうかは白紙の状態です」
大阪府が行なう私立高校の無償化についてはどうだろう。
「ポイントは、所得制限という言葉。大阪では世帯収入を590万円以下に区切って、学費の一部を補助しているにすぎません。大阪府の私立高校への援助の順位は、全47都道府県のうち43位にとどまるという民間の数字もあります。それと比べると、私立高校の学費無償化が実現している東京都のほうがよっぽど進んでいます」