90歳を目前に自宅を新築
私は90歳を目前に、自宅を新たに建て直しました。みなさん、声にこそ出しませんでしたが、「老い先短いのに何とち狂ったんだ」と思ったことでしょう。でも、年だから我慢しなくちゃいけないなんて決まりはありません。我慢してもいいことは起こらないし、楽しくありません。
顔にはシワにシミばかりです。歓迎しているわけではありませんが、悲しいことでも、良くないことでもありません。一緒に生きてきた「わが同士」ですから。それだけ一生懸命生きてきたということじゃないかしら。個性のひとつとして愛おしくさえ感じます。
振り返るってみると、私は幼い頃から「なぜ?」「どうして?」が口癖だったようです。ピアノを始めた6歳の頃から、興味をひくことは片っ端から周囲を質問攻めにしていました。
今も自分の知らないことには、好奇心が尽きません。生命の神秘のことや宇宙のこと。宇宙なんて、9割以上は正体不明の未知の物質とエネルギーでできているんですってね。こうした楽しい「疑問」を発見していくと、俄然、年老いてからの日々も楽しくなっていくと思うのです。
【プロフィール】
室井摩耶子(むろい・まやこ):1921年、東京生まれ。6歳でピアノを始め、東京音楽学校(現・東京藝術大学)を首席で卒業。1945年、ソリストデビュー。1956年に独ベルリン音楽大学に留学し、海外を拠点に13か国でリサイタルを開催。61歳で帰国後は、国内を中心に演奏活動を続けている。国内で現役最高齢のピアニストとして、大手メディアへの出演も多数。新著に『マヤコ一〇一歳 元気な心とからだを保つコツ』。