国際情報

【プーチンと習近平】世界でもっとも危険なふたり 「蜜月関係」がもたらす新たな国際秩序

ジャーナリスト・峯村健司氏が2人の“個人的関係”に迫る

習近平とプーチンの「蜜月関係」がもたらすのは…

【プーチンと習近平・連載最終回】習近平が父親から多大な影響を受けたのと同じように、父のトラウマがウクライナ侵攻へ駆り立てる原動力となったプーチン。そんな2人が抱く「同じ夢」が、今後の世界情勢を左右することに──。ジャーナリスト・峯村健司氏がレポートする。(文中敬称略。第1回から読む

 * * *

プーチン失脚説に激怒

 厳しいネット規制が敷かれている中国。数百万人の「ネット監視員」が、政府批判の書き込みがないかどうか、目を光らせている。そんな厳戒下にもかかわらず、3月11日に中国政府の外交方針を批判する書き込みが波紋を呼んだ。

「プーチンと一緒にされてはいけない。中国が同じ船に乗れば、プーチンが失脚した際に巻き添えを食らうからだ。一刻も早く手を切るべきだ」

 上海市共産党委員会の幹部養成学校の教授、胡偉(こい)が「ロシア・ウクライナ戦争の起こりうる結果と中国の選択」と題した論文をインターネット上に発表した。

 胡は、国務院(政府)に政策を提言する国務院参事室公共政策研究センターにも勤務したことがある政策ブレーンの一人。この論文も上層部に提出したものだった。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、国際社会が対ロ批判を強めているにもかかわらず、盟友、ウラジーミル・プーチンを擁護する習近平への痛烈な批判だった。

 政府関係者による習批判とあって、中国国内ではすぐにアクセスできなくなった。しかし、コピーされた論文の画像が、SNS上で瞬く間に広まった。論文が書かれた背景について、胡の同僚だった中国の大学教員が解説する。

「胡氏はハーバード大学で研究したことがある優秀な研究者です。論文の大意は、欧米諸国と相対してロシア寄りの姿勢を崩さない上層部を心配する共産党と政府のなかの大多数の本音でしょう。ところが、論文のある部分が上層部を激怒させたと言われています」

 はっきりとは言わなかったが、前後の文脈から「上層部」とは習近平のことを指しているのは確かなようだ。この大学教員が指摘するのが、論文中の次の部分だ。

「西側の制裁は前例のないレベルに達しており、ロシアの人々の生活は深刻な影響を受けている。反プーチンの勢力は結集しつつあり、政変が起こる可能性も否定できない。ロシア経済は崩壊寸前で、プーチンの権力維持は困難だろう」

 習の盟友、プーチンの失脚に言及したことが逆鱗に触れたようだ。論文は、当局によって「秒シャン(ミャオシャン=1秒で削除されること)」された。だが、批判はこれだけにはとどまらなかった。5月上旬、外交をつかさどる中国外務省関係者からも批判の声が上がった。

「ロシアの優勢は、ウクライナの頑強な反撃と、西側諸国の巨大で有効な援助により打ち消された。プーチン氏のリーダーシップによる『ロシアの復興』と呼ばれるものは、存在しない偽りの命題だった。ロシア側の完敗となって終わりを告げることになるだろう」

 駐ウクライナ大使を務めた高玉生が、中国政府系シンクタンクが主催した非公開のオンライン講演会でこう指摘した。この講演内容を香港メディアが報じて、中国国内でも広がったものの、これも「秒シャン」された。ロシアで勤務をしたことがあり外交政策にも助言をしている元外交官による露骨なプーチン批判は、波紋を呼んだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
屋根工事の足場。普通に生活していると屋根の上は直接、見られない。リフォーム詐欺にとっても狙いめ(写真提供/イメージマート)
《摘発相次ぐリフォーム詐欺》「おたくの屋根、危険ですよ」 作業着姿の男がしつこく屋根のリフォームをすすめたが玄関で住人に会ったとたんに帰った理由
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん
《ドバイの路上で脊椎が折れて血まみれで…》行方不明のウクライナ美女インフルエンサー(20)が発見、“危なすぎる人身売買パーティー”に参加か
NEWSポストセブン