厄介なのは、自覚症状がないことが多く、命にかかわる病状に陥るまで気がつかないことがあるということ。だからこそ、肝炎ウイルス検査で自分の体の状態を知り、命を脅かす病気の芽を摘んでしまうことが重要なのだ。30代のときC型肝炎ウイルスの感染が発覚した伍代も、検査を受けた当時についてこう振り返る。
「33才の女の厄年に長期公演があり、その準備として健康診断を受けたら、肝機能の数値がほんの少しだけ悪かったんです。そこで念のために精密検査をしたところ、C型肝炎のキャリアだとわかりました。舞台に穴はあけられませんし、当時はインターフェロンという副作用の強い注射の治療法が主流だったことなどから治療は先延ばしに。頃合いを見計らいながら経過観察をすることになり、その期間、肝機能の数値が少しだけ高い状態が続きました。
この“少しだけ高い”というのが慢性肝炎なのですが、怖いことに何の症状もないんです。痛くもかゆくもない。自覚症状がないだけに、検査をしないと感染がわかりません。だるさなど症状が出ていなくても、血液に肝炎ウイルスが潜んでいる可能性がゼロとは決して言い切れない。だから検査を受けてほしいのです。私自身も身近な人に検査を勧めていますが、実際にC型肝炎が見つかった友人もいました」
感染した人の約70%が慢性化
検査は採血1回で済む。岡崎市では40才の節目に肝炎ウイルスの無料検査受診券を該当する市民へ郵送しているが、受診券の利用は約1割に留まっているという。
「本市では41才以上で検査を受けたことのないかたにも毎年、がん検診と一緒に肝炎ウイルスの無料検査受診券を郵送しています。おそらくまだまだ受けていないかたがいらっしゃると思いますので、市の無料検査をもっと活用していただきたい。市では国民健康保険の加入者が特定健診と同時に受けられる体制を整え、“現役世代”が受けやすいように土曜日にも検査を実施しています」(青山課長)
検査の受検率アップへ向けて、岡崎市では新しく「子供から大人へ」の発信にも取り組みたいと、青山課長は語る。
「医師に言われても検査を受けないかたでも、お子さんやお孫さんから促されたら行動に移せる、という話をよく聞きます。市の保健部健康増進課では就学時健康診断や小学校でお話をする機会があるので、今後は肝炎についても盛り込みたいと考えています。お子さんは興味を持てば毎日でも“お父さん、お母さんは検査に行った?”と聞いてくれる。親や祖父母世代に拡散するよう、子供世代にも働きかけていきます」