かつては売れっ子タレントはほとんど出なかった通販番組が様変わりしている。出演するタレント陣がどんどん豪華になり、演出面でもこれまでなかった工夫が見られようになっているのだ。コラムニストで放送作家の山田美保子さんがその背景について解説する。
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マスクや抗原検査キット、体温計など以外でコロナ禍に売れているモノといえば、調理家電、家事家電、季節家電、理美容家電などである。そしてこれらは通販番組でもおなじみのアイテムだ。
坂上、よゐこ濱口、ナイツ、ヒロミ…
が、それぞれの家庭に行き渡ってしまったのか、“ステイホーム”が流行語だった頃に比べると売り上げは落ちているそうだ。
果たして“客寄せ”とばかりに、最近、地上波の通販番組の出演者がやたらと豪華になり、同時に放送枠も増えてきている。
テレビ朝日では坂上忍をメインに、「尾木ママ」こと尾木直樹氏、「サバンナ」の高橋茂雄、ギャル曽根らがレギュラーの『坂上くんが試してみた!!「通販家事スクール」』を不定期で週末の午後にオンエア。フツーのバラエティ番組だったとしても数字が獲れそうな座組である。テレ朝では他にも島崎和歌子と「よゐこ」の濱口優による『ワカコさんとマサルくんのお宅は買わないの??』も。島崎はかつてTBSで、星田英利(旧名・ほっしゃん。)と共に『ショッピンポン!』を3年も仕切ってきた通販のベテランだけに安定感がある。
TBSでは「ナイツ」の塙宣之と土屋伸之、女優の中村静香と大石参月が商品を体験する『カイモノラボ』を深夜に毎日オンエア。「ナイツ」の優れた話術により、トークバラエティとして見られる番組だ。日本テレビには、毎週金曜日にオンエアしている柴田理恵と「Take2」の東貴博がMCの『女神のマルシェ』の他に、24日にはヒロミと、いとうあさこの『ヒロミ★あさこ 昭和平成の懐かしスターを直撃! 令和のバカ売れ商品をお届けSP』が放送されたばかりだ。
かつて通販番組には、専属のアナウンサーがプレゼンし、他の番組ではあまり見かけなくなったタレントらが効果や値段に大袈裟に驚く…という“パターン”が存在していた。俳優や女優が出ることも多かったが、それこそ“懐かしスター”ばかりで、たとえその人たちが、ただのリアクターだったとしても、「欲しい~!」「絶対に買います!」などと言いながら実際には購入しなかったとしても、視聴者は許しているようなところがあったものだ。
ヒデには「売り手としてプロの意識」がある
だが、いまはバラエティ番組にも頻繁にキャスティングされるような現役の売れっ子たちが出演し、ロケに出たり、実際に使用している動画や画像を提供したりして訴求。より視聴者への説得力を増すような作りになっている。
この文脈で真っ先に浮かぶのがフジテレビの【ディノス特番】『ヒデ&川島明のアイテムマスター』だ。
「ペナルティ」のヒデは2014年1月から平日午前の帯番組『ノンストップ!』内の通販コーナー「いいものプレミアム」を仕切っている。最初にオファーが来たとき、「俺、もう“そっち”に行かないといけないの?」と戸惑ったことを複数のインタビューで明かしていたヒデ。だが、いまでは買い手と向き合う誠実な姿勢や、売り手としてのプロ意識があるうえ良い点も悪い点も素直に口にすることをモットーに、在京キー局のテレビ通販売上7年連続No.1の立役者となっている。
筆者は数年前、『ディノス』の担当者が「ウチで扱う商品のことをもっとも知る人」「視聴者からの信頼も厚い」とヒデを絶賛しているのを聞いたことがある。同社とヒデはもう切っても切れない間柄なのである。
「麒麟」川島明も、『ディノス』のフジテレビで『魔女に言われたい夜~正直すぎる品定め~』というリアルトーク通販バラエティのMCをしている。が、それよりは2021年3月29日からMCを担当している帯番組『ラヴィット!』(TBS系)で生活情報に向き合っている効果が大きいのだと思う。人気お笑い芸人が各曜日レギュラーとして多数出演。川島の軽快な進行と程よい生活感、的確すぎるツッコミにより、視聴率は開始当初の1%台から3倍に上昇している。
そんな“最強コンビ”と共に商品を体験しているゲストが、女優の加藤貴子、「ママタレNo.1」の呼び声も高い藤本美貴、そして笑いもわかれば知性派でもある関根麻里という豪華さに驚いた。こうした一流どころが出演をOKしたのも、コアターゲットからの好感度が高いヒデと川島がタッグを組んだことで、番組の全貌や成功が「見えた」からだろう。