好きな人とデートした体験は素敵な思い出になるはず。しかし、デートを“不安要素”と判断し、望まない若者もいるという。思い出をつくるより、リスク回避を優先する若者たちの胸の内とは──。
今年6月に公表された内閣府「令和4年版男女共同参画白書」のある報告が注目を集めている。「これまでデートした人数」を調査したもので、20代男性の40%が「0人」と回答したのだ。その背景にはインターネットの影響もあるという。独身研究家の荒川和久さんは言う。
「インターネットがなかった時代は、情報を得るには体験するしか方法がなかった。ですが、ネット社会で情報過多な現代は、他人の体験をあたかも自分が体験したかのように錯覚し、『恋愛は面倒だ。自分には無理。コスパが悪い。リスクだ』と、勝手にネガティブ意識を植えつけてしまう。これは恋愛に限りません。もちろん、行動したからといって必ず成功するものではありませんが、行動しなければ永遠に機会は生まれません」
若者心理に詳しい金沢大学教授で東京大学客員教授の金間大介さんも、いまの若者は“経験”に消極的だと同意する。これは、「いい子症候群」の典型だと語る。
「周りから見て『いい子』でいようとする彼らは、素直でまじめ、協調性があって、人の話もちゃんと聞きます。そのような姿勢から、『最近の若者は優秀だ』と評価する大人も多い。ただし、『いい子症候群』の彼らは、“場の空気を乱さないようにする”“先頭に立とうとしない”“自分の意見を言わない”という行動特性も併せ持ち、『いい子だけど、何を考えているのかわからない』といった不可解な印象も与えます」
そんな若者たちは、「相手が自分をどう思っているか」を気にしすぎるところがある。決して恋人が欲しくないわけではないが、自分に向けられる感情を恐れるあまり、「恋愛は精神の安定を乱す不安要素」として敬遠するという。
「たとえばレンタカーを借りてドライブしても、『うわ、道を間違えちゃった。きっといま“この人大丈夫?”って思われてる』など、ことあるごとに相手の気持ちを考えて消耗してしまう。それくらい普通だと思うかもしれませんが、『いい子症候群』の若者はその傾向が特に強く、不安が行動を支配するため、提案もできなくなる。そうなると、デートは成立しません。
大人からすれば、恋愛で恥ずかしいことが起きるのは当然だし、むしろデート中のハプニングは今後の笑い話としていい経験になると思うかもしれない。しかし、最近の若者たちにとってはハプニングが起こること自体が恐ろしいのです」(金間さん)
慎重な若者たちは、ハイリスクな“デート”を危険視しているということだ。