狂言師・和泉元彌(48)の厳しい母親として、かつてはワイドショーに出ずっぱりだった和泉節子さん(80)。周囲に迎合しない発言がうけバラエティ番組『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ)にレギュラー出演し“セッチー”と呼ばれるなど人気だったが、最近はあまりテレビで見かけない。節子さん、お元気なのか。節子さんの「今」を直撃した。
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待ち合わせ場所のカフェに現れた節子さん、テレビではいつも和装だが、この日はオシャレな洋装。メガネも高級ブランドもので、ハイソなオーラが漂っている。
「舞台やテレビなど公の場ではお着物ですが、普段は動きやすい洋装です。お着物は汚れると大変ですしね」
齢80だが、お元気そうだ。
「よもやこの年齢まで、元気で(この世に)おいていただけるとは思っておりませんでした。大病といえば、最初の子を産んだ後に体調を崩し、後にC型肝炎と判明したことがございました。寝込みはしませんでしたが、C型肝炎は命にかかわる肝硬変や肝がんになる可能性がございますでしょ。ところが、ワタクシの場合、73歳で治ったんです。この世にお暇するような頃になって治るなんて(笑い)。ほかは、この4月に白内障の手術を致しまして、視力が1.0に回復しました。まだまだ元気でがんばっていこう、と人間ドックを1年半に1度ほど受けておりますが、問題ありません。はい、1日3食、お魚は毎日、お肉も3日にいっぺんいただきますよ。お酒は飲めませんが、偏食はせず食べることが大好きなんです(笑い)」
しゃぶしゃぶと出身地・岐阜の県魚の鮎が大好物で、しゃぶしゃぶなどのお肉なら1回100~200グラムも食べるという。健啖家(けんたんか)であることが元気の秘訣か。
5年前にはYouTubeチャンネルをスタート。小走りしたり、勾配のきつい階段を手すりにつかまらず上ったりするなど、体を張って狂言のPRに務めているから恐れ入る。
「元気なのは、裏方として働き詰めに働いてきたからでしょうか。26歳で重要無形文化財保持者・和泉流十九世宗家和泉元秀に嫁ぎ、男社会のなか長女、次女、長男の3人の子どもを産み育ててまいりました。それぞれ1歳半から狂言のお稽古を早朝から行うのに毎日ずっと付き添い、そのうえでお受験もあり塾への送り迎え。朝から晩まで自分の時間なんてございませんでした。でも、『嫌だ』とは思いませんでしたよ。思ってしまったら、その気持ちを乗り越えるのは大変ですから、最初から思わないんです」
なるほど。
「お舅(しゅうと)さんの人間国宝・九世三宅藤九郎を送ったのが32年前。その5年後に、夫が57歳で急死して……。『元彌にじゅうぶん教え込んどいたから、元彌の後ろをついていけ』と夫は言っていましたが、元彌は当時まだ21歳。ですから、室町時代から続く狂言の伝統を絶やしてはいけない、生存・伝承・普及に尽くす、という一心でここまでやってまいりました。テレビ出演も、YouTubeを始めたのもその一環で、少しでも一般の方に狂言に触れていただきたい、馴染んでいただきたいからです。伝統芸能は何もせずにいては先細り。ですから、YouTubeというものがある、と知ったとき、ワタクシが自分で制作プロダクションを探してお願いし始めさせていただきました」
新しいものに臆せずチャレンジする精神は見習いたいところだ。