「コロナ禍に値上げの嵐など、不穏な社会背景に影響され、人々のストレスは高まっています。不安のしわ寄せは下の立場の人に向かいますが、そんな理不尽に対して直接文句は言いづらい。とはいえ、下の立場の人たちも負の感情はたまりますから、受動的攻撃行動で不満を晴らすわけです」
とは、心理カウンセラーの石原加受子さんだ。たとえば、上司の命令に嫌でも従わなければならないとき、怒りを直接相手にぶつけるのではなく、仕事をわざと遅らせるなど、間接的に反抗心を示す人たちがいる──そうした行動のことを「受動的攻撃行動」と呼ぶ。そんな受動的攻撃行動をする人が多い組織には特徴があるという。
「ミスを許さなかったり、高圧的なワンマン社長や上司がいる組織に多いといえます。こういう環境下では、自分に自信が持てず、意見が言えなくなります。下の立場の人たちは、発言する代わりに仕事の足を引っ張るなどの行動で反発するわけですが、単なる嫌がらせとは異なり、業務全体に影響を及ぼし、上司も部下も共倒れになる可能性が高いのが問題です」(石原さん)
高圧的な上司が社会的立場を追われたり、困っている顔を見れば、溜飲が下がるが、自分もただでは済まないわけだ。こういうタイプの人間がいたら、早めに対策を立てないと、周囲をも巻き込んで問題を起こす。ではどうすべきか、リアルケースから専門家のアドバイスを紹介する。
【ケース1】連帯責任を逆手に上司をおとしめる女
女性初の管理職として総合商社で23年間働いてきた私。結婚して育児と仕事の両立にもがんばってきました。社内人脈もある、と思っていたのですが……。
半年前、私のチームに入ってきた夏美(25才)は、仕事もできて愛想もよく、男性社員のウケも抜群。私に対しても、
「課長が憧れなんです」
なんて言うから、かわいいじゃありませんか。男性優位のわが社で、私のように生き抜けるようにと、仕事のノウハウを厳しく叩き込みました。
ところが、あるときから、夏美が小さなミスを繰り返すようになったんです。会社の制度として、部下のミスは上司である私の連帯責任。彼女がミスをするたび、2人で役員室に行き、謝罪と再発防止の取り組みを提案することになりました。役員からも、
「きみらしくないね。こんなことが続くと困るよ」
と言われ、本気で落ち込みました。それでも気持ちを切り替えて、仕事に取り組む。するとうまくいきかけたところで、また夏美がミスをする。
そんなことが重なって、私の会社での評価が下がり、降格の話まであがるように。
あるとき、席に戻りたくなくてトイレにこもっていると、夏美が同僚とやってきて、
「あいつ、偉そうに説教ばかりしてきてさ。ムカつくから、引きずり降ろそうと思ってんの」
「マジで。夏美怖すぎ」
などと笑って話しているではありませんか。ミスがわざとだったとは……。職場に迷惑をかけてまで、私に反発したかったのかと、怒り心頭。これからどうしてくれようか……。(46才・会社員)
【心理カウンセラーが解説】ほめて認めることで変わるかも
「人を妬んで足を引っ張る人の多くは、自己肯定感が低く、自分に自信がありません。こういう人に厳しい指導はおすすめしません。私のようになりなさいと指導するのではなく、相手のいいところを認めてほめて育てると、“受け入れられている”と満足し、態度も変わるはずです」(心理カウンセラー・石原加受子さん)