日本人の3人に1人が患うといわれる「痔」。痔は肛門の良性疾患の総称で、『裂肛(切れ痔)』『痔核(いぼ痔)』『痔ろう(あな痔)』が3大痔疾患だ。なかでも痔ろうには注意が必要で、炎症が起こった状態を長期間放置すると『痔ろうがん』になるリスクもあるという。
肛門にできるがんは、痔ろうがんだけではない。日本大腸肛門病学会指導医で、さいたま新開橋クリニックの佐藤知行院長が指摘する。
「肛門というとお尻のすぼんだ部分をイメージする方が多いでしょうが、その奥に4.5cmほどの長さの管があります。医学的に『肛門管』と呼ばれるこの部分にできた肛門管がんと、肛門の出口付近にできた皮膚がんのことを『肛門がん』と呼びます」
これら2つのがんも痔ろうがんと同じく、早期発見が難しいという。24年間にわたり、約10万人の肛門を診てきた医師で、『痛み かゆみ 便秘に悩んだらオシリを洗うのはやめなさい』(あさ出版)の著書がある大阪肛門科診療所の佐々木みのり副院長が言う。
「肛門付近の皮膚に長期間炎症が続くと、がんが発生することがあります。なかなか湿疹が治らない、肛門が荒れている、肛門のかゆみが治まらないなどの症状が、実は肛門の皮膚がんだったというケースがあるのです。発見が遅れる理由としてよくあるのが、お尻にかゆみなどの違和感を抱えているのに恥ずかしさから肛門科を受診せず、かかりつけの内科や皮膚科で肛門を見せずに、外用薬を塗るだけで済ませてしまうことです。
内科や皮膚科で肛門を診ることはほとんどないので、異変を見落としやすい。ある患者は医師の指示で3年間もステロイドを塗ったのに全くかゆみが治まらず、改めて肛門科を受診したら肛門の皮膚がんを患っていたということがありました」