上司の命令に嫌でも従わなければならないとき、怒りを直接相手にぶつけるのではなく、仕事をわざと遅らせるなど、間接的に反抗心を示す人たちがいる。そうした行動のことを「受動的攻撃行動」と呼ぶが、単なる嫌がらせとは違い、業務全体に影響を及ぼしかねない。このタイプの人が職場にいたら、どう対応すればいいのだろうか。リアルケースから専門家のアドバイスを紹介する。
【ケース1】重要メモを上司に渡さず握りつぶす女
大手外食チェーン店でパート勤務をすること3年、ついに先日パートリーダーになりました。リーダーになれば社員登用試験も受けられます。
このことは、先輩パートの寛子さん(57才)に誰よりも早く伝えました。新人の頃から丁寧に仕事を教えてくれて、リーダーになれたのは寛子さんのおかげだったからです。
「改めてこれからもよろしくお願いします」
と伝えたところ、寛子さんは、
「あなたの右腕になるよ」
と言ってくれたんです。
ところが、私がリーダーになってわずか1週間でトラブルが発生。本社からの連絡事項はファクスで来るのですが、それがなくなるようになったんです。
送信してくれた担当社員が始末書を書かされる事態に発展したことも。ファクスでは紛失の可能性があると、社員が連絡メモを、その日いるパートに直接手渡すようになったのですが、それも紛失……。
さすがにおかしいと思い、誰にメモを渡したのか探っていたところ、寛子さんが私に渡る前にメモを捨てている場面に遭遇。ショックでしたが、その場で忠告できませんでした。というのも、寛子さんの方がほかのパートたちからの人望があるから。
私は、紛失事件が起こったことで感情的になり、ほかのパートの前で何回か、ヒステリックに怒鳴ってしまったことがあるんです。以降、何かあるとパートたちは私よりまず寛子さんに相談するように。
きっとあのとき、寛子さんは腹の中で舌を出していたに違いない。私の職場での立場は悪くなり、社員登用どころか降格されそう。仕返しをしてやりたいけど、どうすればいいの!(47才・パート)
【精神科医が解説】相手と同じ土俵に立ってはダメ!
「こうした嫌がらせの原因は、嫉妬ややっかみがほとんど。同じような行動で対抗しても火に油を注ぐだけ。相手と同じ土俵に立つべきではありません。ミスをさせられ、孤立するように仕向けられた場合は、一連の事態をメールや文書など記録に残る形で第三者に伝えて対策を」(精神科医・井上智介さん)