新規感染者数が拡大する一方、政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを「第7波」収束後に「2類相当」から見直す方向だ。
その一方で、米セントルイス・ワシントン大学のジャド・アルアリー博士らの研究チームによる最新の研究結果に医療関係者が注目している。研究チームは、退役軍人省の医療データベースを用いて分析。コロナに1回だけ感染した約26万人、2回以上感染した約3万8000人の健康記録を未感染の約530万人のデータと比較した。コロナに2回以上感染した群は1回だけ感染した群と比べ、直近の感染から6か月以内に死亡するリスクが約2.1倍、入院するリスクが約3倍高くなること、そして、後遺症を抱えるリスクも約1.8倍高くなったことが報告されている。
元外務省医務官の勝田吉彰・関西福祉大学教授(渡航医学)は同研究を「コロナに再感染すると1回目より症状が重くなることを、データを用いて証明した初めての論文です」と評価する。そのうえで、勝田教授はコロナは繰り返しかかる可能性があることを強調する。
「一度感染すると体内にウイルスに対する抗体ができるが、これは時間の経過とともにどんどん低下します。よって再感染を防ぐことはできません」
たとえ感染しても、「ワクチンを打っていれば再感染を予防できるのではないか」との意見もある。
だが、現在のワクチンはコロナ初期の武漢型に対応するもので、ウイルスが変異すると感染予防効果が縮減する。特に第7波で主流のオミクロン株の派生型「BA.5」はワクチンの免疫を回避する能力が高いことがわかっている。
免疫学の「抗原原罪」という理論も再感染のリスクを裏づける。京都大学医生物学研究所准教授の宮沢孝幸氏が指摘する。
「最初に打ったワクチンが対象とするウイルス(抗原)の記憶が免疫システムに強力に残り、追加接種しても別の型に対する抗体があまりできないことを『抗原原罪』と言います。このため武漢型のワクチンを3~4回打つと、次にオミクロン株にかかってもオミクロン株の抗体はあまりできていない。オミクロン株の抗体を作ろうとしても武漢型の抗体が強化されてしまう状態になるのです」
日本の再感染者の実態はまだ明らかになっていないが、今年4月に2回目の感染をしたお笑い芸人の東貴博(52)のほか、俳優の沢村一樹(55)や元阪神コーチの片岡篤史氏(53)、広島東洋カープの長野久義(37)など、2回目の感染を公表した著名人は少なくない。
アルアリー博士の研究では、再感染後の症状として胸痛、不整脈、心臓発作、心筋炎、心膜炎、血栓、息苦しさ、血中酸素濃度の低下などがみられた。ただし、再感染が死亡率や入院率の上昇を招く詳しいメカニズムはわかっていない。
ウイルスの専門家である宮沢氏は「抗体が関係しているのでは」と語る。
「一般的には1回目より2回目の感染の症状が軽くなりますが、人によっては逆になることがある。おそらく、最初の感染でできた抗体が2度目の感染時に悪さをして、人体に悪影響を与えるのでしょう。抗体は人体に利益をもたらすだけでなく、不利益を与えることもあります」