8月の風物詩である「夏の甲子園」。今年は3年ぶりに入場規制がなくなり、アルプススタンドにはブラスバンドの“懐かしい音色”が戻ってきた。だが、選手たちは以前の通りとはいかない。グラウンドに立つ前に、「PCR検査」という難敵を越えなければならないのだ。
検査は大会前や大会中に何度も行われる。もし陽性が判明したり、感染が疑われる選手が出れば、試合には出られない。試合直前まで登録選手は入れ替えられるが、もし控え選手の数が足りなければ、試合そのものが行えない。最悪の場合、不戦敗だ。
「体調不良者だけ検査するならまだしも、わざわざ元気な子たちまで検査して、無症状の陽性者をあぶり出して、グラウンドから締め出す必要があるのか。感染していないのに陽性の判定をされる『偽陽性』だってありえます。甲子園をめざして懸命に努力してきたのに、あまりにも非情です」(出場校関係者)
この夏、感染者を急増させた第7波の中心は、感染者のほとんどが無症状や軽症とされるオミクロンBA.5株だ。ナビタスクリニック理事長の久住英二医師が指摘する。
「発熱外来が大混雑していて“医療崩壊の危機”といわれています。しかし実際は、普通なら風邪薬をのんで家で寝ていればすぐ回復するような陽性者が、会社などで必要な証明書を求めて外来に殺到しているのです。重症化するリスクの低い10〜40代の無症状者や軽症者は病院に行く必要はなく、自宅療養で充分です」
昭和大学医学部客員教授の二木芳人さんが軽症者増加の背景をこう分析する。
「ウイルスは変異を繰り返すうちに感染力を上げる半面、毒性は落ちているとみられます。ワクチン接種の徹底や医療従事者が患者への対応を学んだことも、重症者が減少した要因でしょう」
厚労省が7月13日に公開したデータによると、60才未満の場合、第5波(昨年7〜10月)を招いた「デルタ株」の重症化率は0.56%、致死率は0.08%だった。ところが、これが第6波(今年1〜2月)の「オミクロンBA.1株」になると、重症化率0.03%、致死率0.01%まで急落。これは、「季節性インフルエンザ」の重症化率、致死率とまったく同じなのだ。これがさらに「オミクロンBA.5株」に置き換わった第7波になるとどうなったか。
「東京都のデータでは、1日あたりの新規陽性者数は、第6波から第7波(7月末まで)で、約2倍に増えました。一方で、重症患者は半分以下に減っています。つまり、重症化率はざっと4分の1ほどに減っている可能性があります」(医療ジャーナリスト)