2021年のコミック市場規模は、紙と電子市場(推定販売金額)あわせて前年比10.3%増の6759億円(公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所調べ)と、もはや日本を代表するコンテンツ産業と言ってもいいだろう。しかし閉鎖された海賊版サイト「漫画村」による被害額が3200億円(一般社団法人海外流通促進機構による試算)、それ以外のサイトによる被害もいまだ続いている。俳人で著作家の日野百草氏が、海賊版サイトへの懸念についてレポートする。
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漫画の海賊版サイト=漫画泥棒が世界中に跋扈している。そして、私たちの大好きなコンテンツを勝手にばら撒き、金を儲け、あまつさえ日本文化を破壊しようともしている。それは大手出版社のメジャー作品だけでなく、日本独特のマニアックな漫画にまで侵食している。
「海賊版サイトね、いまだに世界中で運営されてるよ。おなじみの中国だけじゃなく、聞いたこともない国でもやってる」
旧知の中小出版社の漫画編集者が語る。マニアに向けた漫画業界、主に男性向け漫画など中心に作品を送り出している。
「海賊版のニュースは大手のメジャー漫画ばかり目立つけど、一部のオタク向けや男性向けこそやりたい放題だ。連中にすれば、そっちも金になるし、むしろクールジャパンの最たるものだからね」
大手出版社のメジャー漫画が中心の海賊版違法サイト「漫画村」が提訴され、それまでアングラだった違法サイト問題が大々的に報じられるようになった。誰もが知る人気作品、漫画に興味がなくとも耳にするような大手出版社が一同に提訴したとしてテレビで特集も組まれた。
しかし現実は、いまも世界中で漫画の海賊版サイトが運営されている。あまり報じられないが、「OTAKU」の代名詞ともいえるマニア向けの漫画やライトノベル原作の漫画、男性向け漫画、男性同士の恋愛創作ジャンルのBL(ボーイズラブ)などの海賊版サイトも野放し状態だ。
「中小出版や編プロは訴えるほどの力がないからってやりたい放題だよ。個人だとどうにもならないし作家もかわいそうだよね。実際、大手出版社みたいに海外相手の訴訟なんて金も手間も掛かるからできない。悔しいけどね」
大手各社は「漫画村」の元運営者に対して総額19億2900万円の損害賠償を求めて提訴した。また有名漫画家も「漫画村」の広告代理店を提訴、勝訴した。これらは画期的な出来事だが、それができたのは大手出版社、そして大人気作家という面もある。つまるところ「金」と「手間」の問題である。