ライフ

思春期の「脳育て」に絶対必要なこと 「トリセツ」シリーズ著者・黒川伊保子さんが解説

黒川伊保子氏

思春期の脳は誤作動が少なくない(黒川伊保子氏)

 思春期の子どもが、ず〜っと家にいる夏休み。四六時中子どもと顔を突き合わせなければならないので、親にとっては実は頭の痛い季節だ。特に思春期の子どもがいる家庭は厄介だ。話しかけてもスマホを操作しながら生返事。ちょっと注意すれば逆ギレ(もしくは無視)。静かだから勉強しているのかと、部屋をのぞけばいつも寝ている……。思わず小言のひとつやふたつも言いたくなるというものだ。

「思春期は、子ども脳から、大人脳への移行期です。12歳までは子ども脳、15歳からは大人脳。13~15歳の間の3年間は、脳の移行期に当たります。つまり、ハードウェアはバージョンアップしたものの、ソフトウェアがまだ旧バージョン。当然、誤作動するわけです。いわば、ポンコツ装置。一生で一番、不安定で制御不能な状態なんです」

 と指摘するのは、ベストセラー『妻のトリセツ』をはじめとする、数々の「トリセツ」シリーズの世に送り出してきた黒川伊保子さん。

 そのポンコツ装置で、思春期の子どもたちは受験や初恋、友達とのあれこれなど、多くの山谷を乗り越えていかなければならない。脳の不整合により、うまく言葉が紡げない。身体も急激に変わっていくので、バランスがとりにくい。競技選手なら、この時期にスランプ陥ったりすることも多い。しかも、この移行期の最後に大人脳が完成してしまうので、親が子どもの言動に、いちいち動揺したり、叱りつけたりしている暇はない。

「もうね、仕方ないんです。子ども自身もどうしていいのかわからないんですから。親は、“あ〜盛大に誤作動しちゃってるのね”と、温かな同情を寄せるしかないと、腹を括ってください」

 遅刻なんかしなかった子が遅刻する。忘れ物なんてしなかった子が忘れ物をする。優しかった子が、友だちにイラついて「死ねば?」なんて口走る。ニコニコ顔で起きてきた子が、おはようも言わず、仏頂面で起きてくる。前髪を切りすぎただけで、涙があふれてきて、学校に行きたくないと言い出す……。

「これらは、思春期の脳の想定内の誤作動です。もちろん、いじめや非行のサインは見逃してはいけませんが、単に家庭内で、性格が悪くなっただけなら、その原因を探ろうと思っても無意味です。誤作動する装置で生きてるんだから、誤作動している。ただそれだけなんです」

眠らないと、頭はよくならないし、背も伸びない

 そんな思春期の子に、夏休みに親がすべきこと、してあげられることはなんだろうか。

「思春期の子どもの脳に一番大切なことは、 “早寝・早起き”です。プラス、“朝ごはん”。早起きと早寝でせっかく脳のリズムをつくり出しても、朝ごはんを抜いたり、糖質過多の朝ごはんを食べることによって台無しになってしまいます。というわけで、“早寝・早起き・朝ごはん”は、脳育ての基本であり、脳を仕上げる思春期の脳にも、最重要項目と言っていいと思います」

“勉強もしないで、寝てばっかり!”というのは、中学生の子どもを持つ親たちの共通の悩みではあるが、

「イライラする気持ちは、本当によくわかります。でも大丈夫。この脳と身体で生きるのは、この3年間だけ。人間は、一生、中学生の時のように眠いわけじゃないですから」

 思春期の子の親にとって、何より大事なことは、「眠りは無駄な時間ではなく、脳にとって最も大事な時間であることを腹に落とすこと」と黒川さん。

「脳は、眠っている間に進化します。脳神経回路を書き換え、記憶の定着を促す。つまり、勉強をしただけでは、頭はよくなっておらず、その後、眠ることで、頭がよくなります。脳が変化期にあって、脳内の整備のためにも睡眠時間が必要です。思春期の脳は、とにかく眠りを欲していると心得てください」

関連記事

トピックス

SNSで出回る“セルフレジに硬貨を大量投入”動画(写真/イメージマート)
《コンビニ・イオン・スシローなどで撮影》セルフレジに“硬貨を大量投入”動画がSNSで出回る 悪ふざけなら「偽計業務妨害罪に該当する可能性がある」と弁護士が指摘 
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、入学式で隣にいた新入生は筑附の同級生 少なくとも2人のクラスメートが筑波大学に進学、信頼できるご学友とともに充実した大学生活へ
女性セブン
漫画家・柳井嵩の母親・登美子役を演じる松嶋菜々子/(C)NHK 連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合) 毎週月~土曜 午前8時~8時15分ほかにて放送中
松嶋菜々子、朝ドラ『あんぱん』の母親役に高いモチベーション 脚本は出世作『やまとなでしこ』の中園ミホ氏“闇を感じさせる役”は真骨頂
週刊ポスト
都内にある広末涼子容疑者の自宅に、静岡県警の家宅捜査が入った
《ガサ入れでミカン箱大の押収品》広末涼子の同乗マネが重傷で捜索令状は「危険運転致傷」容疑…「懲役12年以下」の重い罰則も 広末は事故前に“多くの処方薬を服用”と発信
NEWSポストセブン
『Mr.サンデー』(フジテレビ系)で発言した内容が炎上している元フジテレビアナウンサーでジャーナリストの長野智子氏(事務所HPより)
《「嫌だったら行かない」で炎上》元フジテレビ長野智子氏、一部からは擁護の声も バラエティアナとして活躍後は報道キャスターに転身「女・久米宏」「現場主義で熱心な取材ぶり」との評価
NEWSポストセブン
人気のお花見スポット・代々木公園で花見客を困らせる出来事が…(左/時事通信フォト)
《代々木公園花見“トイレ男女比問題”》「男性だけずるい」「40分近くも待たされました…」と女性客から怒りの声 運営事務所は「男性は立小便をされてしまう等の課題」
NEWSポストセブン
元SMAPの中居正広氏(52)に続いて、「とんねるず」石橋貴明(63)もテレビから消えてしまうのか──
《石橋貴明に“下半身露出”報道》中居正広トラブルに顔を隠して「いやあ…ダメダメ…」フジ第三者委が「重大な類似事案」と位置付けた理由
NEWSポストセブン
小笠原諸島の硫黄島をご訪問された天皇皇后両陛下(2025年4月。写真/JMPA)
《31年前との“リンク”》皇后雅子さまが硫黄島をご訪問 お召しの「ネイビー×白」のバイカラーセットアップは美智子さまとよく似た装い 
NEWSポストセブン
異例のツーショット写真が話題の大谷翔平(写真/Getty Images)
大谷翔平、“異例のツーショット写真”が話題 投稿したのは山火事で自宅が全焼したサッカー界注目の14才少女、女性アスリートとして真美子夫人と重なる姿
女性セブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《中居氏とも密接関係》「“下半身露出”は石橋貴明」報道でフジ以外にも広がる波紋 正月のテレ朝『スポーツ王』放送は早くもピンチか
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された
〈不倫騒動後の復帰主演映画の撮影中だった〉広末涼子が事故直前に撮影現場で浴びせていた「罵声」 関係者が証言
NEWSポストセブン