永田町には、安倍晋三・元首相を失った喪失感がいまだ続いている。その大きな政治的役割を継ぐ後継者は現われるのか。
そこで本誌・週刊ポストは、「安倍氏の後継者にふさわしい人物は誰か」というテーマで評論家や政治ジャーナリスト、保守論壇の学者、官僚OB、エコノミストなど各分野の専門家26人に緊急アンケートを行なった。
【選者は有馬晴海氏、石橋文登氏、潮匡人氏、江上剛氏、大下英治氏、大原康男氏、木下厚氏、古賀茂明氏、古森義久氏、島田洋一氏、菅沼光弘氏、石平氏、田村重信氏、富田隆氏、野上忠興氏、長谷川幸洋氏、福田逸氏、藤井厳喜氏、藤本順一氏、真壁昭夫氏、松田喬和氏、三浦瑠麗氏、宮崎信行氏、百地章氏、山本学氏、屋山太郎氏の26人(五十音順)。複数回答あり(3人まで)。同率の政治家は五十音順で記載した。】
総理大臣が力を振るうには長期政権が必要だ。安倍政治の基盤は選挙に強く、多くの新人を当選させて「数の力」を握ったことだった。政治ジャーナリストの宮崎信行氏は「選挙に強い」ことを後継者の条件に挙げる。
「安倍さんは選挙に厳しく、参院選の1人区で候補を勝たせることができなかった県の有力議員は大臣にしなかったほど。その点、菅(義偉・前首相)さんや萩生田(光一・経産相)さんは選挙に強い。東京都連会長の萩生田さんは今回の参院選で生稲晃子氏を当選させ、菅さんは三原じゅん子氏をトップ当選させた。この2人は当選させた仲間を大事にする安倍さんの手法を受け継いでいる」
そういう意味では、まだ跡目が決まらない最大派閥・安倍派を将来継ぐ者が安倍政治の後継者レースで優位に立つことになる。
表のように、識者アンケートでは各分野でまんべんなく名前が挙がった萩生田氏が最多得票となったが、安倍氏の生い立ちを描いた『安倍晋三 沈黙の仮面』の著者で政治ジャーナリストの野上忠興氏は、「担がれる資質」も見落とせないと指摘する。
「安倍さんは名門出身だが、決して“オレは岸信介の孫だ”“安倍晋太郎の息子だ”とひけらかすことはなく、近づきやすい人柄で若手の頃から先輩や同僚議員から“晋ちゃん”と呼ばれて親近感を持たれた。そのことが、周囲に人が集まり、神輿に担がれて若くして出世できた大きな理由だと考える。
そう見ると、安倍さんの跡を継げる政治家として福田達夫氏(4位)を挙げたい。祖父も父も総理という安倍家以上の政治の名門家系で、人柄も近づきやすい。安倍さんと同じ“総理に担がれやすい”タイプといえるのではないか」
識者の意見が割れるのは、「多士済々」とみるべきか、それとも人材不足を物語るのか。果たして、この顔触れの中から、安倍不在による政治の混迷状態から抜け出させることができる政治家が現われるだろうか。
※週刊ポスト2022年8月19・26日号