ヤクルトの主砲・村上宗隆の勢いが止まらない。史上最年少となる22歳でシーズン40本塁打に到達し、8月12日のDeNA戦では2日連続となる41号ソロを放った。本塁打と打点では他を寄せつけない独走態勢を築き、打率でもトップに肉薄する。三冠王まで射程に入ってきた。NPB史上初となる5打席連続ホームランまで記録した怪物だが、2017年のドラフトでは1巡目の1回目で清宮幸太郎(日本ハム)を抽選で外したヤクルトに指名された「外れ1位」だ。外れ1位が大活躍を見せるケースは過去にもあるが、選手の側はどういった心理で受け止めているのか――。
外れ1位ながら入団後に素晴らしい活躍を見せる現役選手でいえば、巨人の主将・坂本勇人だろう。2006年の高校生ドラフトで巨人が1位指名したのは、堂上直倫だったが、3球団競合の末に抽選で交渉権を獲得したのは中日だった。そこで巨人が外れ1位で指名したのが、光星学院(現・八戸学院光星)の坂本だった。2年目からレギュラーに定着し、以来、チームの核であり続けている。
他にも、DeNAの守護神・山崎康晃は、2014年のドラフトでの外れ1位(DeNAの1回目の氏名は日本ハム入りした有原航平)であるなど、同様の例は少なくない。
PL学園のKKコンビ(桑田真澄、清原和博)が注目された1985年のドラフトでは、6球団が1位指名を清原和博として競合した。交渉権を獲得したのが西武だが、クジを外した阪神が外れ1位で指名したのが、後に“松井(秀喜)キラー”として名を馳せる遠山奬志(昭治)だ。1年目は高卒ルーキーながら、先発ローテションの一角を担い8勝を挙げている。この年の高卒新人投手としては、桑田の数字も凌ぐ最高の成績だった。
遠山氏はこう振り返る。
「指名を受けた本人たちは(外れ1位を)意識していないと思いますよ。特にボクはプロを考えてもいなかったくらいなので、気にしなかったですね。もちろん指名順位が低いと断わる選手もいます。ただ、村上もそうですが、ボクは高卒ルーキーですからね。即戦力ではなく、将来性を期待されて球団が指名してくれた。指名順位はありますが、入団すれば横一線。1位でも最下位でも実力があれば上にいけるのがプロです。どちらかといえば指名順位よりも、合同自主トレやキャンプで自分が(新人の中での実力が)何番目かというほうが気になりましたね」