関係者以外は立ち入り禁止の区域を特別に見学できるバックヤードツアーが鉄道各社で開催されている。それらのなかに「初公開」される貴賓室の存在がある。近ごろは、豪華列車の旅の前に利用する「駅ラウンジ」などもあるが、それとは異なり、海外からの来賓や要人、皇族が利用するためにつくられた知られざる駅の「貴賓室」の存在について、ライターの小川裕夫氏がレポートする。
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コロナ禍も3年目となった2022年のゴールデンウィークは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行政による行動制限は行われなかった。しかし、夏からコロナの新規感染者が増加し、再び各種業界は第7波という危機に直面している。今後、利用者を増やすには新たな需要を創出するためにあれこれと知恵を絞る。鉄道各社や旅行代理店などは、バックヤードツアーという新たな鉱脈を見出した。
普段、関係者でなければ足を踏み入れることができないバックヤードを行程に組み込んだツアーは、どれも盛況となっている。そのため、鉄道各社と旅行代理店は第2弾、第3弾といった具合に、次々とバックヤードを打ち出す。
東武鉄道は10月18日を皮切りに、来年の2月10日まで断続的にバックヤードツアーを開催する。
「同ツアーは営業前の東武博物館を貸し切りにして参加者に満喫してもらうほか、東武浅草駅で構内放送やホーム上でのマジックハンド使用といった普段ではできない体験もツアーに組み込んでいます。また、東武浅草駅には貴賓室があるのですが、これまでは一般公開していませんでした。今回のツアーでは、この貴賓室を外から見学できます」と話すのは、東武鉄道広報部の担当者だ。
貴賓室とは天皇皇后両陛下や皇族、政府高官、海外からの賓客といった要人を接遇する目的で設けられた特別な部屋を指す。貴賓室は県庁や空港、国立競技場といった施設にも設けられ、鉄道だけの施設とは限らない。しかし、鉄道の貴賓室は乗車の際に待合室として、また到着後は休憩室として役割を果たす。そうした背景も手伝い、全国各地の駅に貴賓室が設けられた。
明治期から鉄道駅に貴賓室はつくられていることから、その歴史は古い。学術的な研究分野としても取り組まれてきた。しかし、高度なセキリティに関連する部分のため、これまで貴賓室に関する情報は公開されず、学術的な研究も進んでいるとは言い難い。