副業収入が300万円以上にならなければ、手元に残るお金が減り、重税感だけが増すことになる可能性が出てきた。従来の副業はもちろん、例えばシェアリングエコノミーのような、スキルなど形がないものも含めた遊休資産の貸し出しを仲介するサービスで、貸主はそれによる収入が得られるというような新たな副業ビジネスなどにも影響があるかもしれない。俳人で著作家の日野百草氏が、まだ改正(案)ながら事業所得・雑所得300万円の壁に悩まされる人たちの声を聞いた。
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このままなら、年間売上300万円に満たない副業は反証の通らない限り、事業所得ではなく、すべて雑所得とされてしまうかもしれない。
国税庁は8月31日まで『所得税基本通達の制定について』とする改正案に関する「意見公募手続」(以下、パブリックコメント)を募集している。拙筆『国税庁「300万円以下の副業は雑所得」案はサラリーマン狙い撃ちの愚策ではないか』は多くの反響をいただいたが「年間売上300万円に満たない副業は原則として雑所得」という案は、現時点ではあくまで「案」とはいえ衝撃的だろう。
・改正案
〈業務に係る雑所得の範囲に、営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得が含まれることを明確化します。〉
〈また、事業所得と業務に係る雑所得の判定について、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定すること、その所得がその者の主たる所得でなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得と取り扱うこととします。〉
副業で300万円以上を稼がなければ事業所得ではなく雑所得として取り扱う。つまり青色申告(以下、青色)ができず白色申告(以下、白色)となる。このままなら、改正案の通りになるなら、個人事業で副業を手掛けるサラリーマン、これから始めようとしているサラリーマンにとっては実質「増税」感の増す可能性が高い。
会社の許可を得て、副業で小規模な案件を請け負う若手Webエンジニアが語る。
「副業は年間150万円くらいです。知り合いの小さな会社をいくつかグロスで請け負っているので事業所得、青色申告で提出していましたが、これからか心配です」
彼は独身、サラリーマンとしての年収はまだ若いこともあって400万円ほど。副業の売り上げが年間150万円とするなら、経費を20万円として(白色でも経費は計上できる)、青色でなく雑所得となるとおおよそ13万円くらいの実質的な「増税」となるのではないか(あくまで一例としての概算。実際は個人の事情、状況により上下する)。
「この業界は同じように外注として個人で請け負うこともあります。会社にもよるのでしょうが、私は将来のためにもそうしています。サラリーマンとしても手取りが減っていますし、副業を推奨しておいてこれは納得できないですね」
2022年4月からの雇用保険値上げ、同年10月からの失業保険の値上げ、2023年10月からすべての事業者が消費税を納めることになるインボイスときて、ついに政府はサラリーマンの「副業」に目をつけた。今回の案では、年間売上300万円に満たない副業は反証の通らない限り雑所得とされてしまう。簡単に雑所得のデメリットを挙げる。