スポーツ

【コロナと甲子園】全選手がPCR検査 陽性者が出た代表校の混乱と不安、周囲への感謝

(共同通信社)

コロナ禍の影響を受けた球児たち(共同通信社)

 緊迫した投手戦、息をつかせぬ乱打戦──炎天下の甲子園球場(兵庫・西宮市)で、高校球児たちがはつらつとグラウンドを駆ける。だがその裏で、選手たちは相手チームとは別の“見えない敵”との戦いも強いられていた。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が、コロナ禍の影響を受けた球児たちの夏をレポートする。【全3回の第3回。第1回から読む

 * * *
 いつ、どのタイミングでクラスターが起きるかは球児にとって、まさに天国と地獄だ。前述したように、甲子園出場校の選手は事前に全員PCR検査を受けた。対象者は1600人を超えた。それだけ大きな規模で検査を行えば、陽性判定を受ける選手が出ることは避けられない。

 地方大会後の検査で集団感染が判明した浜田(島根)、有田工(佐賀)、九州学院(熊本)、帝京第五(愛媛)の4校は、初戦の組み合わせでも日程が調整され、登場が最も遅い大会8日目(8月13日)に組み込まれた。それまでに陽性者がチームに復帰し、登録メンバーを変更することなく戦うことができたが、異例の対応には批判的な意見もあった。有田工に勝利した浜田の家田康大監督は感謝の言葉を口にした。

「たくさんのご意見があるなかで、寛大な措置をとっていただき、日程まで考慮していただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。子供たちが喜んでいる表情を見ることができて、心動かされています」

 島根大会の決勝が行われた7月28日のあと、登録メンバーの大半が陽性者となった。陰性者だけの練習を続けていたなか、8月9日、10日に快復した選手が練習に復帰。11日に甲子園に入って、2日後に試合を戦った。先発した2年生左腕の波田瑛介もコロナに苦しんだひとりだった。

「発熱はあまりなくて、咳だけ。自宅で10日間ほど隔離生活を送っていました。柔軟(体操)とか、肩肘のインナーマッスルを鍛えたりしていましたが、ボールは投げられませんでした」

 長い期間、キャッチボールすらしていない投手がマウンドに上がる不安は計り知れない。

「自分はバランス良く投げるのが身上なんですけど、下半身が使えなくて、思うようにいきませんでした。目指す存在は(浜田の先輩で、同じく夏の甲子園を2度経験した)和田毅さん(プロ野球・福岡ソフトバンク)です。これから追い越していきたい」(波田)

 一方、大きな混乱に陥ったのは、やはり組み合わせが決まったあとに陽性者が出た県岐商や九州国際大付(福岡)だ。当然ながら、試合日程を変更することは不可能。大会本部は感染拡大予防ガイドラインを改定して登録メンバーの入れ替えを可能とし、試合の72時間前の時点で全員の陰性が確認されれば出場が可能という柔軟な対応を行った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン