これまで、税金を投じてさまざまなコロナ対策が行われてきた。その“コストパフォーマンス”は、どうなのだろう。
2020年4月、当時の安倍晋三首相の肝いりでスタートしたのが「アベノマスク」だ。マスク不足解消のため全世帯向けに1億3000万枚、介護施設や保育所用に約1億5700万枚を配布した。2021年11月の会計検査院の報告では、マスク購入や包装・輸送などに543億円、保管費が2021年3月までで6億円あまりにものぼり、希望者への再配布に約5億円かかった。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広さんが言う。
「アベノマスクのコスパは論外です。布マスクに感染予防効果がないことははっきりしているので、投じた費用すべてが無駄でした」
「コロナ治療薬」の購入には、総額1.5兆円の予備費や補正予算が投じられた。名古屋大学名誉教授の小島勢二さんは、治療薬の費用対効果に疑問を投げかける。
「139億円を投入したアビガンは薬事承認の目途が立たず、1000億円以上を投じたレムデシビルもWHOが行った世界規模の臨床試験では死亡率の減少は確認できていない。160万人分を1350億円で購入したモルヌピラビルの1人当たりの治療単価は8.4万円ですが、ベトナムではジェネリック製品を使用し、1人当たりの治療単価は1160円程度です。
その他の抗体薬や経口薬も大きな成果は上げられず、大量の余剰が出て廃棄される恐れがある。壮大な無駄が予想されるので、政府はこれまでに廃棄処分された薬や、今後廃棄処分する可能性のある薬の購入金額を明らかにすべきです」(小島さん)
感染症法の扱いにより、コロナ対策の「医療費」は公費負担となり、これまで7300億円が投じられた。横浜市立大学大学院データサイエンス研究科准教授の五十嵐中さんは言う。
「健康保険組合のデータを分析すると、入院した場合の費用は平均80万円を超えるが、軽症で自宅待機は平均2万円ほど。入院率が低下する中、医療費よりも感染者や濃厚接触者の隔離による経済損失に目を向ける必要があります」(五十嵐さん)
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんは「軽症者の入院」を問題視する。
「一時期、無症状の感染者がホテル療養を強いられました。隔離による生産性の低下だけでなく、感染が疑われる人が隔離を恐れて検査を受けず、感染が拡大することにつながりました。また、医療機関は軽症者を入院させると補助金がもらえたため、経営的に潤った。政府が多額の医療費を投じたことで、医療機関に既得権益が生じました」