オムニバスドラマとして人気を呼ぶ『ほんとにあった怖い話』(フジテレビ系)。今年もその新作が放送されるが、注目すべきは8月に放送されるのが4年ぶりという点。夏の放送にはどんなメリットがあるのだろうか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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20日21時から『ほんとにあった怖い話 夏の特別編2022』が放送されます。この番組は実際にあった怖い話をオムニバスドラマ化したもので、1999年のスタートから今年で24年目の放送。
今回も、「完全新作!実録心霊ドラマ5本立て」と掲げて、神尾楓珠さん主演『非常通報』、岩田剛典さん主演『謝罪』、乃木坂46・山下美月さん主演『一言のあやまち』、ももいろクローバーZ・高城れにさん主演『憑けてくる』、松本若菜さん主演『遊び待つ』が放送されます。
その通称「ほん怖」は、夏らしいホラーテイストの番組でありながら、8月の放送は実に4年ぶり。それまで連ドラ版と春・冬の特別編以外は、ほとんどが8月でしたが、2019年から2021年までの3年間は10月に放送されていました。
『ほん怖』を夏に放送するメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
『怖い話』はフジテレビのブランド
まず『ほん怖』を夏に放送することのメリットについて。お盆は死者の霊が帰ってくる時期であり、古来から伝統芸能の演目に怪談が選ばれてきました。さらに、「寒気を感じさせて暑さをやわらげる」という理由が後付けされ、かつては心霊特番や怪談コーナーが風物詩となっていました。
しかし、現在ではほとんどそのような番組は見られません。その理由は、コンプライアンスや個人情報保護の問題から、「視聴率が獲れない」「怖いものへのクレームが増えた」「映像や写真の加工技術が上がりフェイクの判断が難しい」などがあります。
だからこそ、本当にあった実録としての怖さを持ちながら、子どもたちを交えた笑いのあるスタジオパートや、時にハートフルな物語がある『ほん怖』は、家族そろって見られる貴重なコンテンツ。フジテレビは『リング』『らせん』を連ドラ化するなど「怖い話」というジャンルに熱心だったこともあり、「夏の風物詩である怖い話の伝統を受け継いでいく」という意味でブランディングの1つになりうるのです。
また、「怖い話」は、もともと「好きな人はお金を払っても見る」という嗜好性の高いジャンルであり、テレビ局にとっては今後の収入を担うべき配信視聴が期待できるコンテンツ。アイドルなどのファンが多いタレントを起用しやすいことも含め、お金を稼げるコンテンツとしての可能性を秘めています。
フジテレビのブランディングという意味で、もう1つあげておきたいのは、『世にも奇妙な物語』との関係性。『ほん怖』と『世にも奇妙な物語』はフジテレビが誇る2大オムニバスドラマであり、「ほんとにあった」リアルな前者と、ファンタジーの面白さがある後者という対照的な魅力があります。
近年、『世にも奇妙な物語』は6月と11月に放送されているため、『ほん怖』は10月より8月のほうがバランスはよくなりますし、オムニバスドラマは他局にはほとんどないため、よりフジテレビ独自の強みを感じさせられるでしょう。