放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は“日本で一番うまい歌手”MISIAがラジオを絶賛してくれたことについて綴る。
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芸術学部を出てるので“芸術学士”なのだが小さい頃より“大衆芸能”ばかりで育ち、エンタメで喰いつないできた。「人生の“喜怒哀楽”を表現するのが役者である」ときいたことがある。ならば「人生の“春夏秋冬”を表現するのが作家である」と言える。その喜怒哀楽と春夏秋冬に寄り添ってくれるのが「歌」である。常にそこに歌がある。こんな機会でもないとイラストの佐野クンもなかなか歌手を描くチャンスもないと思うので(いつもほとんどが“笑芸”の人だ)。
口をすっぱくして言っているが日本で一番歌がうまいのがMISIAである。彼女が雑誌のインタビューに答えて「ラジオは特別パーソナルなメディアで、特に東日本大震災の直後、そしてコロナ禍。世間が不安に包まれている時、高田センセの明るい声がきこえてきてホッとしました。気持が追い詰められず、心が楽になったんです」みたいなことをたくさん喋ってくれてる訳。こんな私でも少しはひとの役に立っていると思うと50年以上この業界で働いてきてよかったんだなと素直に思う。
「ユーモア」とは「ヒューマン」(人間)からきている言葉だからネ。あらゆる生き物の中で笑うのは人間だけ。音楽で、手拍子をみんなで合わせられるのも人間だけらしい。動物たちは音は立てられるが、拍手を合わすことはできない。こんな人間にお互い自信を持とう。
MISIAのコメントが嬉しくて私の昼のラジオで紹介し「MISIA(ミーシャ)も、メーシャも、ハイシャもみんな聞いてるこのラジオ」とやったらややうけ。
私の放送が終わって9時間後、夜の10時から12時は月に1回の『MISIAのオールナイトニッポンGOLD』。すぐに反応して冒頭からMISIAが私が昼に喋ったことを興奮して伝えてくれた。生から生、ラジオならではのライブ感である。収録ばかりのテレビではこうは行かない。