久しぶりの行動制限のない夏に、天皇皇后陛下はあえて御所から離れないことを選ばれた。雅子さまは相当なご覚悟を持たれ、療養中のお体のことよりも、「使命」をまっとうされた。その両陛下のお姿から、愛子さまが学ばれたこと──。
東京の気温が30℃を超えた8月15日、日本武道館(東京・千代田区)では、終戦から77年目を迎えた今年も全国戦没者追悼式が開催され、犠牲になったおよそ310万人が慰霊された。新型コロナウイルスの感染拡大を考慮して、式典の規模は縮小されたが、遺族ら992人、岸田文雄首相など政府関係者、そして天皇皇后両陛下が参列された。
「会場に向かう車に乗られた両陛下は、緊張感に満ちていました。特に天皇陛下は、口を真一文字に結ばれているのが印象的でした。雅子さまは、特徴的なボタンがあしらわれたグレーのスーツにグレーの帽子、黒の靴にパールのネックレスとイヤリングを合わせられていました」(皇室記者)
式典は11時50分過ぎに開始。雅子さまは、陛下と歩みを揃えて標柱まで進まれると、陛下とぴたり同じタイミングで深々と頭を下げられた。正午、1分間の黙祷が行われた。
「私たちはいま、新型コロナウイルス感染症の感染拡大によるさまざまな困難に直面していますが、私たち皆が心をひとつにし、力を合わせてこの難しい状況を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」
黙祷後、陛下がおことばを述べられると、雅子さまはその左隣で耳を傾けられていた。昨年の同式では、お辞儀の際にふらつかれ、倒れそうになるご様子もあった雅子さま。しかし、この日は堂々たるお振る舞いだった。
「追悼の辞を述べた尾辻秀久参院議長が両陛下への挨拶を一瞬忘れたときには周囲に緊張が走りましたが、尾辻議長がはっと思い出し、礼をしたときにも、両陛下は動じることなく対応されていました」(宮内庁関係者)
新型コロナ感染拡大の影響で公務が制限されるなか、体調を万全に整えてこの日を迎えられた皇后としてのご覚悟がにじんでいた。
今年も、天皇ご一家は異例の夏を過ごされることになった。皇太子時代からご一家で例年8月上旬に出かけられていた須崎御用邸(静岡)でのご静養には、3年連続で行くことができなかった。
「一昨年、昨年とは異なり、今年はコロナ禍以降初めての政府による行動制限要請がない夏で、宮内庁はご静養いただく方向で調整を進めていたといいます」(前出・皇室記者)
ご一家にとってご静養は家族水入らずで過ごせる貴重な機会である。愛子さまは今年3月の成年に際する記者会見で、両陛下との思い出を問われ、「須崎御用邸近くの海にサーフボードを浮かべ、両陛下と座ろうとしたら3人とも落下してしまった」というエピソードを笑顔で明かされた。その機会は、またもコロナにより失われようとしている。
「第7波が猛威を振るっていることもあり、例年8月下旬にお出かけになられていた那須御用邸(栃木)でのご静養も、内々で準備が進められていたものの、中止の見込みです。政府のルール上は問題ないですが、さまざまな憂慮から、両陛下がご決断されたのでしょう。人一倍感染対策に気を使われていたご一家には“今年こそ”というお気持ちもあったはずで、苦渋のご決断だったことでしょう」(前出・宮内庁関係者)