人間は様々な感染症とともに生きていかなければならない。だからこそ、ウイルスや菌についてもっと知っておきたい──。白鴎大学教授の岡田晴恵氏による週刊ポスト連載『感染るんです』より、新型コロナウイルスの変異ウイルス発生とHIVの関係についてお届けする。
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8月第1週の日本の新型コロナの新規感染者数は約150万人。3週連続で世界最多となっています。さらに現在、BA.5から、その次のBA.2.75という新たな変異ウイルスに移行しつつあります。
これまで次々と流行の波が襲ってもう第7波となっていますが、大事なのは波ごとに異なるウイルス(変異ウイルス)で流行が起こっているということです。大流行中は人間側も大変な思いをしますが、コロナウイルスも夥しいウイルスが生まれ、その中で勝ち残ったウイルスが子孫ウイルスを残すという強烈な過当競争をやっています。
パンデミックですから、この瞬間にもたくさんのウイルスが細胞の中で複製され、そして、外に排出されて、次の人へと飛び移っています。ウイルスが増えるということは、それだけ遺伝子がコピーされるということですから、コピーエラーも起こりやすくなります。つまり、遺伝子のエラーが起こりやすく、変異ウイルスが生まれてきやすいのです。
こうして変異ウイルスがたくさん出てきますが、多くは消えていきます。勝ち残るのは感染者の体内では増殖力の強いウイルス、体の外では感染力の強いウイルスです。そして、感染力と増殖力が強いエリートウイルスが他のウイルスを駆逐して、新たな波を作って大流行を繰り返しているのです。
この変異ウイルスが発生しやすい地域、エピセンター(流行集積地)となっていると心配されているのが、南アフリカなどのアフリカ諸国です。これらの地域にはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染している人が多くいます。