世界各国で体温を超える暑さが続いている。しかし、それはまだ序章に過ぎない。あと30年もすれば、気温50℃が当たり前になる日常がやって来るかもしれないのだ。それだけではない。地球温暖化による海面の上昇で国土が消滅する国や、水の争奪戦で隣国といがみ合う国が出てくる可能性も決して低くない。地球が炎熱に覆われる未来はそう遠くない──。
『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)の著書がある気象予報士の森さやかさんが話す。
「欧州では今年、何度も熱波が襲っている。イギリスはこれまで高くても38℃台だったところ、いきなり史上初めて40℃を超えました。フランスもイタリアも記録的な大干ばつに見舞われています。ただ、日本列島は海に囲まれているため気温上昇は欧州までいかない。
ただし、日本は湿度が高く、100年後には米気象局の計算式による体感温度が東京でも50℃に達する恐れがある。この体感温度は4段階のうちもっとも高い危険レベルで、熱中症が高確率で起こる段階です」
気象庁の観測は芝生の上、1.5mが標準だ。最高気温が40℃を超えた場合、都心のアスファルト上など照り返しの強い場所では50℃近くになるところも珍しくないとされる。いずれにしても近いうち、私たちの体を50℃の熱風が襲うのは間違いなさそうだ。そうなれば、うつりゆく現在の四季も変わってしまう。地球物理学者の島村英紀さんが解説する。
「温暖化により、世界中でデング熱やマラリアなど蚊が媒介する伝染病のリスクがある場所の北限が上がっています。蚊は最も人を殺している生き物といわれ、温暖化で暖冬になると一年中生息できるようになり、日本でもデング熱やマラリアなどが流行し、命を落とす可能性も出てきます」
森さやかさんが続ける。
「デング熱などの感染症を媒介するヒトスジシマカという種類の蚊は本州が北限でしたが、近いうち北海道に生息域を広げる可能性が指摘されています」
そのほか、青森でりんごが育たなくなり、暖かい土地で取れるみかんの産地になってしまうなど農作物の変化も予測されている。
「フランスではぶどうから作るワインの味にも影響があります。寒冷地でできたぶどうは酸味が入っていいバランスになりますが、現在のフランスワインは温暖地の甘いテイストになりつつあるといわれています。酸味を求めて、ぶどうの栽培適地がもっと北上するかもしれません」(森さやかさん・以下同)