スマホやSNSの影響もあり、社会問題化しているのが薬物使用の急増と若年化だ。2020年の薬物事犯検挙者数は1万4567人で、過去10年で最多となった。このうち大麻は過去最高の5260人で、うち30才未満は3511人、中高生を含む少年だけでも899人にのぼる。
ご存じの通り、アメリカやカナダ、タイなど、大麻の所持や使用は、海外では合法化が進んでいる。また国内でも、大麻の幻覚成分を含まない「CBD(カンナビジオール)」だけは、医薬品としての効果があることが認められており、正しく抽出されたCBD製品ならば危険性はないとされる。
だが、こうした世界的な「大麻ブーム」を利用して「大麻(を使用すること)は危険ではない」「合法化しない日本は遅れている」という、誤った価値観を広めようとする者がいることは、否定のしようがない。元厚生労働省麻薬取締部部長で『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮社)の著者・瀬戸晴海さんが言う。
「親世代にも、若い頃に海外旅行などで大麻を吸った経験のある人はいるかもしれません。ですが、いまの大麻は30年前と比べると、依存性・幻覚作用のある成分である『THC(テトラヒドロカンナビノール)』の濃度が格段に高くなっています。
一部の国や州が大麻を合法化しているのは、決して“無害だから”ではありません。多くの場合、あまりにも蔓延しすぎていて取り締まりが限界に達していたり、刑務所の過剰収容が問題になっていることなどから、苦肉の策として合法化に至ったにすぎません。合法化は自由化ではない。決して、推奨しているわけではないのです」
しかも、瀬戸さんによれば、現在ワックスやリキッドなどの形で流通している濃縮大麻のTHC濃度は、日本に自生する大麻の60倍以上とケタ違い。「海外では普通だから」などと軽い気持ちで購入すると、その代償ははかり知れない。何より恐ろしいのは、脳の発達への影響だ。
「かぜ薬も、子供は少量で効きます。つまり、体が未発達であるほど、薬物の影響は大きいのです。大麻を吸うと脳神経が破壊され、認知障害につながる可能性も指摘されています。また、大麻はそれ以外の薬物依存やほかの犯罪への入り口となる『ゲートウェイドラッグ』としての危険性が高いことも問題です。
自分で使用するだけでなく、小遣い稼ぎに密売を始めた挙げ句、強盗に襲われて命を落とすケースや、薬物を買うお金を得るために窃盗や売春に手を染めた例は、枚挙にいとまがありません」