2018年に漫画家デビュー50周年を迎えた一条ゆかりさん。彼女の長年の経験と、鋭い洞察力から生み出された至極の言葉を集めたエッセイ集『不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集』が発売直後に重版となり、話題を呼んでいる。小学生時代に漫画を描き始めてからいまなお名作を生み出し続けているレジェンドの、素顔に迫るインタビュー。【全3回の2回目。第1回から読む】
悩む前に自律せよ!
困った問題に直面しても、責任転嫁せずに自己責任で対処すること。そうやって、一条さんは生きてきた。
「私もね、できれば他人に自分の荷物を持たせて楽したいんですよ。でも私のことだから『持ち方が気に入らない』とか『後でお礼を言うのも面倒』とか、結局自分で持った方が楽なんですよ。
要は、自分の荷物は自分で持てて、自分の管理も自分でできた方がストレスは少ないです。
簡単に言えば自立するとか、自分を律するという意味の“自律”ですね。10代20代ではよしとして、30才過ぎたら自律してほしい! 勝手な妄想を抱いていないで、自分の耳に気持ちのよい言葉ばかりをほしがらないで、ちょっと背中を押してほしいと思わないで、もういい大人なんだから人に悩みを打ち明ける前に、『自律しろ!』って言いたいです」
“自律していないと、勝手な妄想を抱く”という点が気になり、その理由を尋ねると、
「自律していない人というのは自分を正しく知らない人です。客観的に自分を把握できないと、自分が何ができて、何ができないかを判断できなくて、できそうもないところに時間とエネルギーを注いでしまう。
若いときに失敗するのは明日の薬だけど、明日が少なくなってきた人は間違えると致命傷になるから危険です」
致命傷……ですか? それはどんな間違いで?
「たとえば、いくつになっても主役でいたいと考えてる人って危ういと思うんです。はっきりいってよほどの人でない限り、50才を過ぎたら主役にはなれません! ここを間違うと悲劇ですよね。でも大丈夫!
私がおすすめするのは、名脇役です。熟年女性の武器はさまざまな経験で培った知恵と精神的な豊かさだと心得て、大人の魅力で勝負です。
きわめていれば主役を食ってしまうほどの脚光を浴びることだってたまにはあります。かっこよく生きたいと思うなら、客観的に自分を見つめて、自分の旬が過ぎる前に次の手を打つ!
つまり、かわいいが通用する若いうちに、次なる武器を用意しておかなければ、痛いオバサンになってしまうってことです」