今ワイドショーで見ない日はない弁護士の紀藤正樹氏。旧統一教会の問題を追及し続ける紀藤氏だが、1990年代に「霊感商法」や「合同結婚式」が大きく取り上げられて以降、世間的な注目度は皆無に等しかった。そんななか、なぜ彼は圧力に屈せず闘ってこられたのか。
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「『統一教会に法のメスをいれてほしい』ということは、弁護士になってから30年以上、ずっと行政や警察などに言い続けてきたことなんです。しかし行政だけでなく政治は見て見ぬふりを続け、統一教会は被害者を出しつづけ、安倍元首相の襲撃という悲惨な事件が起きた。この“空白の30年”は、弁護士としての僕の敗北の歴史なんです」
そう話すのは、第二東京弁護士会に所属する紀藤正樹氏(61)。1990年に弁護士として活動を開始し、旧統一教会問題を中心にカルト宗教がもたらす被害について警鐘を鳴らし続けてきた。
「法学部にいた頃から『霊感商法』は話題になっていたし知っていましたけど、霊感商法の問題に関わることには信教の自由の問題もあり、最初は躊躇していたんです。
ですが、実際に弁護士として現場で相談を受けていると、あまりに卑劣なことが起きていました。事務所に来た高齢のおばあさんが僕の足下で、『先生のところに生きて来られた』と泣き崩れるんですよ。献金のせいで家族が崩壊し、事務所に相談に行こうとしたら、教会の人に『あの弁護士のところに行ったら交通事故に遭って死ぬ』と言われた、と言うんです。最初はあまりにもひどい人たちだと、単純に統一教会信者のことを思っていました。
しかしその後、裁判対策で証人になってもらおうと元信者の話を聞くようになると、霊感商法で相手を騙している側の信者も『人を救ってあげたい』という善意で不法な行為をしていたことがわかってきた。善意につけ込んで『他者を助けるには人のお金を奪うことが正しい』と信者に思い込ませ、身内ごと不幸にするなんて、とんでもないと思った」
1992年、複数の芸能人が参加し注目を集めた旧統一教会による「合同結婚式」は、世間の関心を多く集めた。しかし以降はメディアによる扱いも減り、問題は地中に潜っていくことになる。
「世間の注目がない間にも、統一教会は拡大し続けた。それどころか信者に子供ができて2世問題が生まれ、今は3世問題や1世の介護問題にまでなっています。
僕ら弁護士は地道に、被害者の相談の対応をしたり、講演やイベントがある度に、名前を出した政治家や自治体などに公開質問状や申し入れ書を提出したりしていた」