三冠王を目指すヤクルト・村上宗隆の活躍に注目が集まるなか、セリーグの打撃部門を見ると目を疑う成績で低迷している2人の強打者がいる。巨人・岡本和真とヤクルト・山田哲人だ。岡本は下から2番目の打率.240と確実性を欠き、山田はなんと規定打席以上でリーグワーストの打率.238に沈んでいる(8月23日時点)。
2020、2021年と本塁打、打点の2冠王に輝いた岡本は今季、リーグ2位の24本塁打をマークしているものの、リーグトップの村上は45本塁打と独走しており、3年連続のタイトル獲得は厳しい状況だ。今年は特に好不調の波が激しく、8月11日の中日戦から中田翔に4番を明け渡し、6番に降格している。他球団のスコアラーは岡本の打撃不振について、こう分析する。
「5番を打っていた坂本勇人が度重なる故障で戦線離脱したことが大きく影響していると思います。岡本へのマークが厳しくなり、四球を出してもいい配球でストライクゾーンになかなかこない。岡本も自分で決めようとするあまりボール球に手を出して打撃フォームを崩していった。甘く入ったらスタンドに運ばれますから、相手にとって怖い打者であることは変わらないんですけどね」
力みからミスショットする打席も目立つが、チームが下位に低迷している状況も心理的に影響しているだろう。巨人を取材するスポーツ紙記者は「物静かな性格ですが、責任感が強い選手です。なかなか勝てない中、チームリーダーの坂本が不在の時は何とかしなければいけないという思いが伝わってきた。中田が4番に座っていますが、巨人打線の理想形は岡本の4番です。マスコミの注目度の高い巨人は4番が打たなければ、バッシングの標的になる。これも乗り越えなければいけない壁ですね」と期待を込める。
もうひとり、今季なかなか調子が出てこないのが山田だ。19本塁打とコンスタントに長打を打っているが、打率が上がってこない。岡本の場合は後ろを打つ5番打者が固定できずにマークが厳しくなったが、3番を打つ山田は後ろに球界最高の強打者・村上が控えている。相手バッテリーの警戒は分散するものの、145キロを超える直球に対して空振りが目立ち、108三振はリーグで2番目。岡本よりも“重症”と言って差し支えないだろう。
他球団のある捕手は「今年は『やられた』と思った失投を空振りしたり、ファールになるケースが多い気がします。以前の山田だったら確実にスタンドに運ばれていました」と証言する。
山田は他球団の選手たちも認める天才打者だ。打率3割、30本塁打、30盗塁のトリプルスリーを3度記録する前人未到の快挙を成し遂げ、昨年は打率.272、34本塁打をマーク。主将としてチームを引っ張り、20年ぶりの日本一に大きく貢献した。ただ打率に関しては2019年以降打率.280に届かず、20年以降の盗塁数は一桁と数字が落ちている。
スポーツ紙デスクはある懸念を口にする。